ステキな誕生日


――11月3日――

爽やかな秋晴れ。

まるで世界中が祝福しているかのように感じる、最高に素敵な俺の誕生日・・・。




『そろそろ来るかな・・・』

俺は、ゆっくりとタバコをふかしながら、最愛の恋人である北島マヤが来るのを、都心のプライベートマンションで待っていた。


半年前からスタートさせ、順調な2人の交際・・・。


・・・・・が、が、が・・・・彼女と2人きりの空間で過ごすのは、今夜が最初だったりする♪

――ハジメテノ☆ヨル――

その言葉には、男としてのイケナイ期待が充満しまくっている。

『あぁぁぁ、マヤ!!!!』


――今夜こそは、2人の関係が大進展の予感でいっぱいだっっ!!――





ピンポーン♪


『来たっ!!』

呼び鈴がなると、俺はいそいそと立ち上がり、モニターを確認後、ドアロックを解除して大きく深呼吸をした。


ガチャリ・・・


「速水さん!お誕生日おめでとう!」

ドアを開けるなり、満面の笑みで俺の目の前に現れた彼女は、一瞬にして俺の視界を1000ワット以上の明るさに変えた。

彼女は、以前に俺が紫のバラの人としてプレゼントした紫のドレスに身を包み、頭には紫の大きなリボンをヒラヒラと強調させている。


『可愛い・・・可愛すぎる・・・俺の服のセンスも最高だ・・・』

こんなに魅力的な彼女が自分の恋人だと思うと、幸せで体が溶けてしまいそうだ・・・。


ふと彼女の手元を見ると、とても大きなケーキの箱が揺れていて、俺は照れ隠しをするように彼女をからかった。

「ずいぶん大きなケーキじゃないか。まあ、君なら一人で食べきれるかもしれないけどな・・・」

その言葉を聞くと、彼女は少し頬を膨らませて

「もうっ!」

と怒りながらも、俺の腕にまとわりついた。 

俺は笑いながら彼女を部屋へとエスコートし、ゆったりとしたリビングへ足を向かわていく。

一秒一秒が幸せでたまらない。



「速水さん・・・あのね・・・プレゼントなんだけど・・・けっきょく・・・・選べなくて買えなかったの・・・」

俺がソファーに腰を下ろそうとしていると突然、彼女は下を向きながら申し訳なさそうにそう声を出してきた。


「プレゼントか・・・そんなものはいらないよ。君と過ごせるだけで俺は充分だよ・・・」

俺はそう言いながら、彼女と視線を絡める。


「・・・あたしね、1日中デパートも歩いたんだけど、速水さんが欲しい物が分からなくて。それに、速水さん、何でも持っているんだもん」

「・・・・・・ありがとう・・・その気持ちが嬉しいんだ。・・・もう気にするな・・・」

俺はゆっくりと彼女を引き寄せ、思いきり強く抱きしめていた。


俺は本当にプレゼントなどどうでもよかった。

それなのに彼女は俺の声をさえぎるようにして言葉を出す。


「あのね・・・それで・・・あの・・・プレゼントは買えなかったんだけど・・・ちゃんとプレゼントはあるから・・・」

「・・・ん?」

俺がうつむいている彼女の顔を覗きこむようにしていると、彼女は恥ずかしそうに小さな声で呟いた。


「あたし・・・こんな風にドレス着て・・・リボンもつけて・・・まるでプレゼントみたいでしょ・・・・?」


「!!!!!!!?」


「・・・あたしを全部速水さんのものにして・・・!」


「マヤ!」


俺は、彼女のあまりにも可愛いセリフと表情にクラクラし、そのまま彼女を強く抱きしめ、その場でソファーに押し倒し、真っ赤になっている

彼女の表情を窺った。


「いいのか・・・・?」

俺の言葉に、彼女はゆっくりと頷く。


――こういう関係になれる日を、俺は何年待ったことだろう――


俺は、大切なプレゼントの包装をゆっくりと開けるようにして、彼女のドレスに手をかけた・・・・。


「こんな事しか思いつかなくてゴメンね・・・・速水さん・・・」

いじらしい彼女の言葉は微かに震えていた。


「何を言うんだ・・・最高に嬉しいプレゼントだよ・・・」

俺はそう答えながら彼女の首元にキスの雨を降らせていく。


――マヤ!!愛しのマヤ! 今日は人生で最高の誕生日だ! なんて素晴らしいんだ!!――


俺は彼女の瞳の奥をじっと見つめながら呟いた。


「最高だよ・・・・」



「速水さん・・・」

「マヤ・・・」




・・・と、その時!!!・・・・・・・・・




「社長・・!!速水社長!!」


・・・俺の脳裏に、すべてを吹き飛ばすような渋い声が矢のように飛び込んできていた。




「最高だよ・・・・」


真澄は無意識のうちにそう言いながら、ようやくハッと意識を現実に戻した。


・・・周りを見渡すと、甘い雰囲気とは程遠い、いつもの会社の会議室・・・。


『うわ・・・しまった・・・会議中だというのに妄想ワールドに浸ってしまった!!俺としたことが!!!!』


「社長・・・今おっしゃいました「最高」とは、どの企画の部分でございましょうか・・・?」

おずおずと尋ねてくる企画部長。

・・・真澄は、会議の内容など、まるで頭に入っていなかった。

『ヤバイ・・・・・・』

彼が背中に悪い汗をかいていると、有能な秘書の水城がサッとフォローに入る。


「ええ・・・社長はその企画についてと、分かりやすい部長の説明を誉めていらっしゃるようですわ・・・」

「あ、ああ・・そうだ・・・その通りだ。 ・・・続けたまえ」

真澄もとっさに言葉を付け足すと、何事もなかったかのように再び会議は進められていった。


『ああ・・・危ないところだった・・・・。『マヤ!』なんて叫ばなくてよかったナ・・・・』

真澄は胸を撫で下ろし、とりあえず手元の資料などを整理するフリをして息をついた。



・・・今日は、真澄の誕生日。 

先ほどの妄想は100%作り物の世界ではなく、マヤと過ごす予定は本当に入っているのだ。

今日という日が訪れるのを、どれほど楽しみにしていたことだろう!!


『長いな・・・・』

会議をこれほど長く感じたことは初めてだった。

真澄は鼻の下が伸びっぱなしになっている表情を書類で隠しながら溜息をつく。

『早くマヤに会いたい・・・』


・・・今日の彼は地に足が着いておらず、完全に浮きまくっていた。

とても会議に集中できる状態ではない・・・。


彼は、気を抜くとすぐに妄想の世界へと旅立ち、途中で何度も机の下で水城のハイヒールでキックされ、どうにか現実に意識を戻しながら

時間をやり過ごしたのだった。



会議が終わり、水城も所用で不在になると、真澄は社長室で一人、思う存分の妄想を楽しみながらニヤニヤとカレンダーを見つめた。


♪今日は11月3日♪


こんなに自分の誕生日に浮かれた気持ちになるのは何十年ぶりだろう・・・。

あの会議のせいでこうして仕事にくるハメになってしまった事も、今ではどうでもよい事実だった。


『夜はまだかな・・・』

まるで遠足前のウキウキした小学生のように嬉しそうな表情である。

デスクの上で肘を立て、夢見る乙女のように手のひらを頬に当てながらフフフと笑みをこぼす真澄。


イラスト:桜屋 響 様


もうすぐ夕方。 今日はいつもより早めに退社し、マンションでマヤの稽古が終わるのを待つだけになっていた。

2人が付き合い出して半年。 嫌な過去はすべて水に流し、まさにバラ色ハッピー人生を突っ走っているものの、なかなか2人だけで

過ごせるチャンスに恵まれず、最近、さり気なくマンションを手配したのだ。 


――そして、今日はマヤと2人きりになれる初めての日♪――


マヤは、稽古帰りに大きなケーキを買ってくると言っていた。 真澄も一緒に行こうと提案したのだが、「びっくりさせたいから・・・」などと

可愛いことを言い、彼は彼女が来るのをマンションで待つという段取りになったのだ。


そして肝心なプレゼント!!


実は先日、マヤはこんなことを言っていた。

「ごめんね・・・速水さん。どうしてもプレゼント選べなくて、やっと決めたの!お金で買うものじゃなくて・・・まだ言えないんだけど、当日まで

我慢してね♪」

と・・・。

真澄はその言葉を信じ、今日まで我慢に我慢を重ねてきた・・・。 今夜こそ、その我慢を解き放つ時なのであろう!



真澄は目を閉じ、再び あれこれと妄想を膨らませていく。


――彼女はどんな顔をしてやってくるのだろうか――

――どんな顔をして「プレゼントは、あ☆た☆し☆・・・なの・・・」なんて言うのだろうか――


想像しただけでも体中の血が騒いでしまう。なんだか、とても血行が良くなりそうだ。

しかし、そんな彼女のセリフに『よっしゃあ!』とばかりに襲い掛かるのもカッコ悪いので、できるだけ『俺はそんなつもりではなかった』と

いう演技も必要である。

そこで、ブツブツとセリフを返す練習など始めてみる真澄。


「マヤ・・・!そんな・・・急ぐことはない。俺はただ、君とこうして肩を並べているだけで幸せなんだヨ・・・」

『これでは、なんだか勇気を出してくれたマヤに申し訳ない気もするなァ』


「マヤ・・・ありがとう・・・!今日はもう一つの記念日だな・・・」

『おお!これはいいセリフだ!これに決まりだ!』


真澄は満足そうに頷いた。 後は、棒読みにならないように気をつければよい。マヤは演劇に関してはプロなので、用意していたセリフだと

バレないようにしなくてはいけない。こんなことなら月影先生にちょっぴり演技指導をしてもらえばよかったなあ、とも思ってみたり。


『早く夜になってくれェェェェェ・・・・!!』

嬉しさと期待と興奮で心臓が高鳴り、口から飛び出しそうになっていく。

もう、社長室の窓から思いきり叫びたい気持ちでいっぱいだ・・・。


今日は、例え会社の株が大暴落して経営の危機が訪れても彼が会社を抜け出すのは確実であろう。


――その日の夜――


・・・まるですべてが想像通りで怖いくらいだった。


真澄がいそいそとマンションの部屋で彼女を待っていると、間もなく呼び鈴がなった。


ピンポーン♪


真澄は、『待ってました!』とばかりに膝をポンと叩いて立ち上がったものの、なるべく警戒されないように爽やかな笑顔を取り繕って玄関へ

急ぐ。テーブルには読んでもいなかった経済雑誌を置き、まるでギリギリまで仕事のことを考えていたフリをするのも演出のひとつだ。


彼はモニターでマヤを確認するとロックを解除し、ドアを開けた・・・。


「お誕生日おめでとう!速水さん!」

マヤは、本当に例の紫色のドレスを身にまとい、大きなリボンをつけて恥ずかしそうに頬を染めていた。


「やあ・・・!早かったな。 どうしたんだ?めかしこんで・・・」

真澄がそう言うと、マヤは照れたようにもじもじと下を向いて言った。


「だって、速水さんのお誕生日だから・・・」

「!!!!」


なんとも可愛い表情!そして仕草!(千草ではない)

真澄はその姿にメロメロになり、顔が緩みっぱなしになるのを必死で抑える。


ふと、マヤの手元を見ると、それは大きなケーキの箱。


「ずいぶん大きなケーキを買ったんだな。驚いたよ・・・」

真澄の言葉に、マヤはニッコリと微笑む。


「びっくりしたでしょ? 特大サイズなの! だって、ロウソクが30本以上乗せられるように、って言ったらコレしかなくて・・・・」

「!!!!!!!!」

『・・・年の話はやめてくれ・・・・』


この辺りからビミョーに妄想と雰囲気が違ってきたようで嫌な予感がしてきた真澄。


しかし、マヤの手にはプレゼントらしきものは何もないようだ。

これは、間違いなく妄想通りと言える。 カタチのないプレゼントと言えば、アレしかない!!!!!

真澄はそう確信すると、ちょっぴり落ち込んだ気持ちを前向きに移し、リビングへとマヤを誘導した。



そして、2人がソファーへと移動した時、マヤはゆっくりと口を開いた。

「あの・・・速水さん・・・プレゼントなんだけど・・・・」


『きたきたきたきた〜!!!!!!』

真澄はドキンドキンしながら彼女の表情を窺っていた。


「ん?ああ・・・プレゼント・・・か。すっかり忘れていたぞ・・・」

本当はプレゼントのことで妄想しまくって会議中もボンヤリして水城に何度も蹴られたのだが・・・。


「この前も言ったけど・・・お金で買えるプレゼントは何も浮ばなくて用意できなかったの・・・その代わり・・・って言うか・・・あの・・・・」

もじもじと恥ずかしそうに言葉を濁しているマヤ。


「ん?なんだ?・・・はっきり言ってくれ・・・」

「速水さん・・・ちょっと呆れちゃうかも・・・恥ずかしいナ・・・」

「恥ずかしがることなんてないだろう?・・・今日は俺の誕生日なんだ・・・早く言いなさい・・・」


真澄は下心いっぱいになり、マヤをギラギラとした瞳で見つめ続ける。彼の99%は狼でできていて、残りの1%で1ミリくらいの羊の皮を

かぶったような状態だ。


「えっと・・・もしかしたら、速水さんはあたしにそんな事させるのは嫌がるかもしれないし・・・」

「・・・・??マヤ・・・??」

真澄は期待通りの展開に胸を躍らせる。


『ははん・・・どうやら、俺がいつもクールで紳士的な振る舞いをしているから、はしたない事を言って嫌われるとでも心配しているのかな』

彼は、マヤが言い出しやすいような雰囲気作りの為、ギリギリまで接近して体を密着させると、指先を彼女の黒髪に触れ、耳元で熱く

囁いた。

「早く聞かせてくれ・・・」


・・・すると、マヤは おもむろにドレスの飾りのような小さなポケットから何かを取り出して握り締めていた。


『なっっ!?何だ・・・?まさか・・・!! ・・・なんて用意がいいんだっ!マヤ!君って子は!!』

真澄はトンデモナイ勘違いをしつつ、息を呑む。

『女の子の君にそんなモノを用意させてしまうなんて、俺はなんて罪な男なんだ! そりゃあ恥ずかしがるわけだな、マヤ!!』

興奮で鼻息が荒くなっていく真澄。




ところが・・・


「これ・・・なの・・・」

マヤはゆっくりと真澄に向かって手のひらを差し出していた。


「????????」

真澄は怪訝そうな表情で手を伸ばす・・・。


――それは、文具店などで売っている、単語帳のようなものだった――


「!!!???」

真澄は無意識にそれを受け取り、パラリとめくってみる。


「なんっっ!!!!!!!!!」

――驚くべき事実が真澄を襲った――


・・・そのカードには、「おつかい」 「肩たたき」 などと明記されたマヤの文字が!!これは一体・・・!!!?


「エヘヘ・・・それね、使いたいときにあたしに渡してね♪ 速水さん、いつも忙しくて疲れているから、少しでも役に立ちたくて♪ あのね、

『おつかい』は、タバコとか買いに行ってあげるから♪ ・・・嬉しい? ・・・・それとも・・・・やっぱり呆れちゃった・・・かしら・・・」


「☆△◎!★!」

真澄はショックのあまり、体を硬直させたまま数秒間動けなくなっていた。


『な、なんだよこれ!!小学生が父の日に贈るようなプレゼントじゃないかっ!!俺はっ俺はっ・・・俺はっ!!!!!!』

泣きたくなるほどのガッカリ感である。 

『この数日間の我慢のご褒美がコレかよ・・・』


しかし、そんなことをマヤに言えるはずはなく・・・・


「ありがとう・・・マヤ・・・嬉しいよ・・・。使うのがもったいないな・・・ハハハ・・・今日はもう一つの記念日だな・・・」

真澄は予定通りのセリフを無意識に使い、パラパラと単語帳をめくりながら、白目青筋で溜息をついた。


『くううう・・・・俺は・・・この数日間、どれだけ今日を楽しみにしていたことか!眠れない夜もあったのに!!』

彼がションボリと肩を落としていると、マヤは張り切ってロウソクの束を取り出し、ケーキに立て始めていた。


「速水さんも手伝ってよ〜!30本以上もあるんだから!!」

『う・・・・年の話はやめてくれと言ったのに・・・』

ただでさえ落ち込んでいる状態の彼に、年齢の話は辛すぎたようだ。

彼は無言でロウソクを立てる作業に手を貸した。



こうして2人は、ロウソクのせいで穴だらけになったケーキをつつき、真澄が想像していたとは別の意味で甘い夜を過ごすことになった。





マヤは、真澄の誕生日だからと言ってマンションに泊まる気もない様子であり、 

『泊まっていくか?』

などと誘える状況ではなかった。


結局、真澄は

『もう帰らなくちゃ!麗が心配しちゃう』

という彼女のセリフをキッカケに、いつも通りに彼女を日付が変わる前までにアパートに送り届け、別れを告げた。



彼はマンションに戻ると、泣きたい気持ちで乱暴にソファーに横になる。


『マヤ・・・!!いくらなんでも鈍感すぎるんだよ!!・・・』

それ以前に勇気のない自分にも問題があるのだが。


『まあいいか・・・もうすぐクリスマスもやってくるし・・・でもまだ1ヶ月以上も先かァ・・・・』

真澄は落ち込みながら、先ほどマヤがプレゼントしてくれた単語帳のカードをポケットから取り出していた。


そして、 「おつかい」「肩たたき」のほかに、「マッサージ」と書かれたカードを発見した真澄は、

『これは別の意味で使ってもいいのかな』

などと、往生際悪く やましい事を考えながらニヤリと笑い、ちょっぴり虚しくなった。


「おや?」

ふと、最後の方までめくっていくと、途中でマヤの字で説明書きがされているのに気付いた。


”ここから先は何も書いてないので、速水さんがあたしにして欲しい事を書いてね”


「!!!!!!」

真澄は急いでカードをめくる。

・・・その次のページからは、何も書かれていない白いカードが数枚残っていた。


『なっ!!!なに!?!? 何でも・・・いいのか・・・?俺がここに書けば、どんな事でも彼女はすると!? 奴隷のように!?マヤ!!』

真澄は興奮気味に体を起こすと、あれこれ想像して鼻血が出そうになっていた。


『何を書こう・・・・あーーんなこと、こーーんなこと・・・!!!!?』

今すぐにペンを用意して書いてしまいたい気持ちでいっぱいだ。


・・・しかし、ふと落ち着いて考えてみると、なんだかとてもカッコ悪いなァ・・・と冷静になる。

『うーむ・・・この俺がカードにウハウハしたことを書いてマヤに差し出すなんて!ダメだ!大都芸能の社長の俺には似合わない!!』

たとえ大都芸能の社長じゃなくても、そんな事はやめたほうが良いのだが。

「・・・・・・」


真澄は深く深く溜息をつくと、ようやく一大決心をした。


『うむむ!俺も男だ!! こうなったら、必ず俺から誘ってマヤと結ばれるんだっ! 』

・・・もっと最初からそのつもりでいるべきであろうが。


『やっぱりマンションに誘うより、どこか景色の良いホテルのスイートルームでも手配するべきだな・・・。 マヤの同居人の目もあるから、

できれば公演か何かで不在の日を狙うか・・・・』

なんとも地味な部分にまで気を配る真澄・・・。

「よーーし!これぞ一大計画!題して『ラブラブ★大作戦』だっ!」

思わず声に出して叫ぶ真澄。





こうして彼は、超純情で鈍感なマヤを口説く為にコツコツと計画を練り始めていく。


しかし、実行に移されるのはまだ半年も先のことだった・・・。






おしまい








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