〜written by ぱんだ〜
「コト」はそれなりに大変だったし、マヤに無理をさせてしまったような気がする。気遣ってやる ような言葉もうまく出なかったし自分の気持ちを伝えたいのに上手く表現ができなかった。
もう十分だった。
出会った頃の話、お互いを想った時の話・・・今となっては全てがキラキラしている。
人生で一番幸せな夜にどうしてまたそんな男の話を聞かなければいけないのかと真澄は少し 不機嫌になった。
マヤが力強く言うものだから真澄はその続きに耳を傾けなければならなかった。
たら一番に報告するって随分前にスタジオで偶然会った時に約束しててね、それで。」
のかという事実に真澄は少しショックを受けた。
さんは仕事が大変な時なのに私は何もできなかった・・・あの時のこと。」
配慮も大きな問題となっていた。数々の困難を乗り越えて二人の関係を公にできるまでには 随分と時間がかかった。
ていたら、涙が出てきちゃって・・・ちょうど速水さんに会えない日が続いていたからとっても寂しく なっちゃって。私が突然泣き出したから、2人ともびっくりして私の話を聞いてくれたの。」 マヤは部屋の天井をまっすぐ見たまま話を続ける。
社長は恋しく思っているよ。だけどたまには言葉にしないと速水社長も同じように不安になって いるんじゃない?』って言われてね、ああそうだなって思ったの。私はいつも言葉が足りないって。 ― で、最後にね『マヤちゃんは本当に速水社長が好きなんだね』って言われたから思わず『うん、 大好き!』って言っちゃって。しまった!と思った時には二人とも大笑い。それでずーっと、からかわ れてたの。」 当時を思い出すかのようにマヤがクスクスと笑い出す。
行くって言ったら更にいろんなこと言われて。『君は男心がわからなさそうだから速水社長も大変 だなあ』とか散々よ?・・・そんなこと沢山、里美さんに言われちゃったから今日はいっぱい意識 しちゃって。それが逆に速水さんを傷つけたりしていたみたいで・・・やっぱり私は男心がわからない んだなあって反省した。」 マヤは真澄の体にぴったりと寄り添いイタズラっぽく笑う。
マヤは真澄の顔を真っ直ぐに見つめた。
「当たり前だろ?嫌だと言ってもずっと一緒だ。」
こんなにも自分は小さい。 真澄の頭の中にスケジュール表はもうなかった。
女将に浴衣を返し、二人で「また来ます。」とお礼を言うと女将は嬉しそうに笑った。
少しも照れることなく真澄が答えた為マヤの方がまた真っ赤になってしまったので女将は声を 出して笑った。
それを見送る雪村みちるのことなど、幸せな二人にはちっとも気がつかなかった。
した一言からだ。 真澄が作成した「しっぽり計画」にはそのコースは入っていなかったがそこは融通の利く男、 速水真澄である。マイナスイオンだけにマイナス思考を改善するのも良し、と多少オヤジギャグ を心で感じながら、滝見物を提案した。
起こす。
マヤが携帯電話を手に真澄を招く。
誘っておきながら悪戦苦闘するマヤの手から真澄はスッと電話を取るとマヤの肩を抱く。
紅葉と滝が綺麗に収まる構図で見事にツーショット撮影に成功した。
嬉しそうに画面を眺めるマヤを見つつ、真澄は提案する。
マヤに教える口実に真澄はツーショットの画像をゲットした。 数あるマヤの「お気に入り顔」セレクションの中でも今回は一段と良い笑顔だ。おまけにその隣 には自分がいる。 (そして、自分もちょっとしたキメ顔で写りもバッチリだ!)
マヤの笑顔に蛇行運転になりそうな真澄は何とか持ちこたえながらも頬だけは緩んでしまう。
などと言ってはいるものの世界中に画像を配信したい気持ちでいっぱいだ。
携帯電話を預かった。
<さやか>の上には<さくらこうじくん>のアドレスが保存されているではないか。
先ほど浴びたはずのマイナスイオンはもろくも真澄の嫉妬心にはじかれたようだ。
たちが雑誌を見ながら「行きたい!」と連呼していたのを思い出したのだ。 今まで気にも留めていなかった女子社員の会話も、今となっては耳をそばだてて聞いてしまう。 マヤと同年代の女性社員の意見は真澄にとっての何よりの情報源だ。
へのプレゼントを受け取ったのである。
目をウルウルさせて喜ぶマヤを見ていたらまたよからぬことを考えてしまいそうだ。 真澄はマヤの背中を押して車中に戻った。
昼食を取った後、真澄は水城からの電話対応に忙しそうだったし、2人がこんなにも長い時間 過ごすことができたなんて奇跡に近いのだ、と、寂しかったけれどマヤもそれに応じていた。
を読み上げながら笑い続けるマヤをこのまま連れ去ってしまいたい気分になる。もうすぐ戻る日常 に真澄もマヤと同じように寂しい想いをするのだった。
ポツリと呟いた。
昔は言葉を交わすだけでも満足だったのに、会うたびにもっと一緒にいたい、離したくない、と 真澄は思ってしまう。 ゴールに到着したらしばらく会えない日々が続くのは覚悟しなければ ならない。今の想いは照れくさくて言葉にすることなどできない真澄は少しだけ遠回りして彼女 を送った。
マヤは手持ちのバッグからそっと包みを取り、真澄に差し出した。
開けると、手のひらに乗る大きさの灰皿が現れた。
ください。」 まるで昨日見た流れ星のようにキラキラと輝くそれは真澄の心を温めると同時にマヤを帰す決心 を鈍らせる。
真澄はマヤを引き寄せ軽く唇を合わせた。 その刹那、住人と思われる年配の女性が真澄の車を覗き込み、ハッとした顔でその場を去る。
マヤがオロオロと慌て始めた。
響く。本当にタイムアップだ。
ひそめる。
酷いよ、酷いよ社長!! ―
どういうことなんだ、一体どういうことなんだ!!という無駄に熱い想いを胸に新ドラマの打ち あわせのために大都芸能を訪れた桜小路は一番会いたくない男をロビーで発見してしまった のだ。
とっては一番会いたい男が目にとまった。
これまでに見たこともないようなビッグスマイルで真澄は桜小路の肩を叩いた。
恐怖を覚えるような笑顔に桜小路がおののく。
桜小路の携帯電話を一瞥すると真澄はヤレヤレと困った表情を浮かべた。
真澄は小声で桜小路に耳打ちをし、不敵な笑みを浮かべて元の場所に歩き出し、絶望的な 桜小路の姿を確認しながらエレベーターを閉めた。
したくなるなどという一般論はこの男には通用しないのだ。
ながらも秘書室の者たちには助かっていた。
水城さん、お疲れ様です。 今回は速水さんのお仕事の調整ありがとうございました! マヤ
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