ラブラブ★大作戦 〜後編〜
「マヤ・・・・」 年甲斐もなくドキドキしながら話を切り出す真澄。 「え?なんですか?」 マヤは口いっぱいにお寿司を頬張りながら、大きな瞳で彼を見つめたいた。
『いかんいかん!マヤに希望を聞いてどうするんだ!俺ってヤツは・・・!!』
「!!!」
真澄は手に汗を握りながら、勝利を確信し、どうにか今日のプランをマヤに承知してもらうべく、言葉を探す。
なかなか言葉が出てこない。
自分の勇気のなさを寿司屋とオッサンのせいにしつつ、真澄は溜息をついた。
「!!!!」 突然マヤが衝撃的な発言をした事により、真澄はクラクラとめまいがしてきた。
「え?そうじゃないけど・・・だって、明日は久々に2人揃ってお休みでしょ? せっかくだから、朝早くから会いたいし、 寝坊したら大変だもん。麗がいないから・・・あたし起きられるか自信ないわ。」
真澄は気が遠くなりそうだった。 マヤには、2人で夜を過ごすなどという発想は欠片もないのだ・・・。
「え?」 『よしっ!!いいぞいいぞ!我ながらナイスなアドリブだ!!』
「あ、でも・・・悪いですよ。そんな朝早くから電話して起こしてもらうなんて・・・・」
マヤの瞳を見つめたまま、必死で口説く真澄。
「え?じゃあ、わざわざ起こしに来てくれるんですか?朝早く・・・?」 「・・・・・・・」
真澄はゴホンと咳払いをし、心臓をバクバクさせながら言葉を出した。
静まり返る店内で、自分の鼓動だけが一人歩きをしているような緊張感走っていた・・・。
「ああ・・・」 結局、肝心な事を告げれないまま、2人は再び車へと戻った。 「あのお・・・速水さん・・・。さっき、あたし変なこと言いましたよね? 朝までお寿司・・・とか・・・。ごめんなさい。もしかして 他に行くところ、あるんですか?」 「・・・・・」 こんな風に改まって問われてしまうと、逆に言い出しにくくなってしまうものだ。
マヤの言葉に、思わず息を呑む真澄。
ホテルに到着しても警戒心すらもたないかもしれない。 本当は承知のうえで誘うつもりであったが、こうなったら無理やり 決行するしかない!!
真澄はとりあえず車を走らせる。 「はい・・・」
『うう・・・女を口説くということがこんなに大変な事だとは・・・俺としたことが・・・!!』 真澄は本当に何も考えていないマヤの表情に溜息をつきながら運転に集中した・・・。
「え・・・?速水・・さん・・・ここって・・・」 マヤは驚いたような表情で言葉を出していたが、真澄はスムーズに地下の駐車場へと車を滑り込ませた。 『いくらなんでも・・・ここまで来たら分かってくれるだろう・・・』
強引に手をとり、並んで歩く2人はロビーへと向かう。
真澄はズッコケそうになり、なんとか体を持ち直した。
そして、軽く前髪をかきあげながら 思い切って言葉を吐き出した。
真澄はクルリと向きを変え、後ろにいるはずのマヤへと視線を移すと、彼女は数メートルほど離れた場所で、ホテルの パンフレットを覗き込んで真剣に見ているところだった。
来たいなあ♪・・・・あ、何か言いました??」
真澄は失神して倒れる寸前だった。
真澄は一度言ってみたかった「恐ろしい子」というセリフを心の中で叫び、立ち尽くしていた。
「・・・マヤ、君はここで待っていてくれ!」 真澄はマヤを残し、ズンズンと先を歩くと、フロントまでルームカードを受け取りに急いだ。 『なんてことだ!!』
すっかり計画が狂ってしまったものの、なんとか目標だけは達成しないと報われない・・・。 「あ、速水さん・・・」 「さあ、行くぞ・・・」 「え?」 真澄は強くマヤの手を掴み、エレベーターへと乗り込んだ。
エレベーターはゆっくりとスイートルームのある最上階へと向かっていく。 「何も心配はいらないよ・・・」 真澄はもう、ここまで来たらマヤを部屋に連れ込むことしか考えていなかった。
そう叫びたい気持ちを押さえ、真澄は無言でマヤを見つめた。
「・・・・・・」 真澄はゴクリと息を呑んだ。ここで拒否されたら立場がないというものだ・・・。
余りにもビックリ仰天するような発想のマヤに、真澄はエレベーターのボタンに頭を打ち付けてしまった。 ゴンッ・・・・
真澄がこれから彼女に教えようとしている事が一般常識なのかどうかは不明であるが・・・。
真澄がそう言ったとき、エレベーターは最上階へと到着し、2人は部屋に向かった。
カードでドアが開かれると、真澄はマヤを促すようにして中へ招き入れた。 『よしっ!!!!』 とりあえずは作戦成功だ。
マヤは興奮しながら子猫のように駆け回っていた。 「わあ!夜景もすっごい素敵♪」 マヤがカーテンを開けて うっとりとガラス越しの夜景を眺めていると、真澄は背後からそっと近づき、彼女を抱きすくめた。
お決まりのような くっさいセリフを吐いてみる真澄。 「ええ?でも、他にも見ている人、たくさんいると思うけど・・・」 「う・・・・」 本当にロマンチックの欠片もありゃしないマヤの発言。
「こんな美しい女神様を独り占めしている俺は世界一幸福な男に違いない・・・」
「速水さん・・・なんか台本読んでるみたいなセリフですね・・・嬉しいけど・・・」
実際、このセリフは何十回も社長室で復唱して覚えたものなのだが。 「あ、ベットもすごく大きいのね〜!!ちょうど2個あるし。 あ、もしかして、あたしも泊まっていいんですか?」
真澄は声を大にして言いたいセリフを呑みこみ、大きく息をついた。
マヤが一通り 部屋の中の探検を終えたようなので、真澄はそう声をかけた。 「え?あ・・・そうですね。じゃ、入ってきま〜す♪」 「・・・・・・」 どうやら、マヤは本当にまだ何も分かっていないらしい・・・。 真澄は気を落ち着かせる為にタバコを取り出し、夜景を眺めながら、先のことを考えてニヤニヤとしてしまった。 不安な課題は山積みであるが、とりあえずは作戦成功と言える・・・。 『おっと!今のうちに・・・・』 真澄はベッドルームへと足を運び、枕の下に大切なモノをコッソリと隠した。 『これは男の責任だからな・・・・』 意外にも律儀な真澄。 昨日、こっそりと人気のない道路の自動販売機で購入しておいたのだ。
「ああ・・・」
白いバスローブに身を包み、洗いたての髪が濡れているマヤ。・・・そしてほのかに赤くなった肌の色は何とも色気がある。 「速水さんシャワーしてきたらどうですか?」 彼女が通り過ぎると、爽やかなシャンプーの香りが広がり、真澄の興奮を一気に高めさせた。 「ああ・・・」 もうすでにテンパッている状態だった。 『落ち着け落ち着け落ち着け〜〜〜!!!まだ先は長いんだ。先が短いと困るんだ・・・』 パニック寸前の真澄の思考回路。 11歳も年下の、世間知らずの純情な彼女を前にして、本当に自分は何をこんなに焦っているのであろう・・・。
真澄はそんな彼女を名残惜しそうに見つめながら、シャワールームへと急いだ。
すぐにでも切り上げてベットに直行したい気持ちがあったものの、あまり焦っているようにするのはカッコ悪い。 なので、ちょっと念入りに体と頭を洗い、心を落ち着かせていく。 ところが、スッポンとウナギの効能なのか・・・・体中の興奮がおさまらない・・・。
真澄が声をかけたものの、マヤからの返事はなかった。 『まさか寝ているんじゃないだろうな・・・・・・』 嫌な予感がしたが・・・・・・・違った。 マヤは、テレビ画面に釘付けになっているのだ。 ちょうど2時間ほどの映画が始まったばかりらしい・・・。
「・・・・・」 真澄が声をかけても、マヤには全く耳に入っていないようだった。 『なんだよおお・・・・・マヤのやつ・・・・』 彼女がドラマや映画の世界に入ってしまうと、何をしても無駄であることはとっくに分かっていた。 『こうなったら・・・・強行突破だ・・・・』 真澄は背後から近づき、プチッと電源をオフにする。
「こんな映画、いつでも見れるじゃないか・・・」 「あたし・・・ずっと見たくて楽しみにしてた映画なのに!速水さんのバカ!!」
「あたしの気も知らないで!!!」
真澄が真剣に反論しようとしていたにも関わらず、マヤは再び映画の世界に入ってしまった・・・・。
真澄は諦めてそう思ったとき、ふとマヤが飲みかけているジュースに気が付いた。 ・・・・桜小路が手渡したジュースだ!!!!!!!! 「おい!マヤ!なんだ?このジュースは!!」 「・・・・・・・」 「マヤ!聞いてるのか?」
ぶっきらぼうなマヤの返事だった。
真澄は呆然としながらマヤの背中を見つめていた。
きっと今も、どっぷりと映画の世界に入り込み、誰と一緒にどこにいるのかも忘れてしまっているのだろう・・・。
分かってない・・・』
映画が放映されていることに気付いてしまい、そのままフリーズした・・・。 『じょ・・・冗談じゃない・・・このまま映画を見て朝を迎えるのか・・・・?嫌だ・・・嫌だ・・・嫌だ〜〜〜!!!』
してみるパワーへと使われてしまったらしい。
と、またまた少し言ってみたかったセリフを胸にした真澄・・・。
*このお話はとりあえずこれで完結です。本当の完結は地下にあったり・・・( ̄ー ̄)ニヤリッ |
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