誕生日の贈りもの
〜written by こゆり〜
マヤは大きな箱を両手で胸に抱きこむようにして抱え、普段より何倍も遅い速度で歩いていた
いつも手にぶら下げているポシェットはベルトに括りつけ、近くを歩く通行人にぶつからないようにしながら、そろそろと慎重な足
運びをしている。
うっかり近付くと噛み付かれそうな雰囲気に恐れおののいて、周りを歩く人たちは自分からマヤを避けていたのだが…
今日は真澄の誕生日。
マヤはぜひとも何か贈り物をしたいと思い、ずいぶん前から贈り物を何にしようかとあれこれと考えていた。
だが、いくら考えても何を贈ったら真澄は喜んでくれるのかマヤにはわからない。
結局マヤは考えに考えた挙句、真澄に電話をかけて、本人に直接欲しいものを聞いたのだった。
真澄から欲しいものを聞き出すのは容易なことではなかったが、マヤが一生懸命にしつこく聞くと、ようやく真澄は答えてくれた。
(本当にこんなのでいいのかしら…?)と不安や疑問をわずかに抱えながらも、マヤは真澄の望むものを用意する。
そして真澄の誕生日当日である今日、マヤは真澄への贈り物を大切に抱えて、大都芸能に向かっているのだった。
自分の誕生日を「おめでとう」と言って誰かと祝うという考えなど、真澄の中には少しもなかった。
それどころか、マヤから誕生日プレゼントに欲しいものを聞かれるまで、真澄は自分の誕生日をすっかり忘れてすらいたのだ。
誕生日や誕生日の贈り物は真澄にとってはどうでもよいことではあったのだが、しどろもどろになりながらも一生懸命に聞いてくる
マヤはいじらしく可愛くて、何とか応えてあげたいという気持ちになる。
けれども、真澄はしばしの間考えるが、欲しいものなど何も思いつかなかった。
(マヤがそばにいてくれるだけでいいんだけどなぁ…それではマヤも納得しなさそうだし……まぁ、欲を言えば…ほら、世間では
よく言われる『あ〜んなこと♪こ〜んなこと♪』とかいうことをしてくれたら嬉しいんだが……まさかこんなこと言うわけにもいかないしな…)
結局いくら考えても何も思いつかないので、真澄はマヤに聞いてみたのだった。
――誕生日といったら君だったら何を思い浮かべるんだ…と。
「聞いているのは私なのに!」と怒ってくるかもしれないとちらりと思ったが、それはいらぬ心配で、マヤははしゃいだ声で即座に
答えてきた。
「ケーキ!丸いケーキ!やっぱりろうそくを立てた大きなケーキですよ!」
真澄は思わずくすりと笑ってしまった。
マヤの楽しげな声は電話越しで聞いても真澄の心を和ませる。
そばで直接見たら、もっと楽しく満ち足りた気持ちになるに違いない。
真澄は自分がケーキを食べたいとは思わなかったが、マヤが満面の笑顔を浮かべながらケーキを食べる姿は見たいと思う。
(よし、決まった…)
誕生日プレゼントはマヤの極上の笑顔をそばで見ること。
堂々とマヤのそばでマヤの笑顔を独り占めできる幸せを改めてかみ締めるのだ。
真澄はややうっとりとしながら、いつものごとく妄想の世界に入っていく。
(…………………)
真澄はふっと息を吐き出す。
(欲を持ってはいかんな…流れに任せて…運良くうまくいけば、〜♪♪♪…ということで…)
真澄は軽く頭を振り、「は・や・み・さ・ん…はい…あ〜ん♪」とマヤがにっこりと優しい微笑を真澄に向けながら、ケーキを真澄の口に
運んでくれる甘い場面を頭の中から振り落とした。
思わずはしゃいでしまったことに謝ってくるマヤをなだめ、ケーキだけでいいのかと何度も繰り返して聞いてくるマヤをどうにか
言いくるめて、真澄の誕生日にはケーキを持ってきてもらうことにする。
だが、真澄は休日といえどもどうしても仕事を外すことができなくて、マヤには会社に来てもらうことにしたのだった。
マヤが到着すると、真澄は他の部屋で仕事に手間取っているということで、マヤは社長室で待たせてもらうことになった。
休日出勤している水城がこっそりと部屋に通してくれたのだ。
マヤはソファーに腰掛け、ケーキの箱を注意深く眺める。
(大丈夫…よね…)
いつものごとく、真澄にからかわれるように言われたのだ。
――こけてひっくり返すなよ
(ちゃ〜んと持ってこれたもん。速水さんって、いつまでも子供扱いするんだからっ)
真澄の言葉を思い出して、マヤは頬を膨らませる。
しかしすぐに、マヤはケーキ屋で見せられたケーキを思い浮かべて、にっこりと微笑む。
大きなホールケーキを注文したり、持ち歩いたりすることは滅多にしないことであり、マヤにとっては、とても緊張したが同時に楽しく
感じる経験だった。
『Happy Birthday速水さん』と書かれた菓子のプレートをつけたケーキを店員に見せられたときは自分がケーキをもらうとき以上に
浮き立った気持ちになったのだ。
(速水さん、よろこんでくれるかなぁ…)
マヤはソファーに深く座りなおして、大好きな真澄の優しい笑顔を思い浮かべる。
そして、にこにことしながら愛しげに大切に運んできたケーキの箱を見つめ続けた。
「すまない、ちびちゃん!」
真澄が謝りながら社長室に入って行くと、大きなソファーに埋もれるように腰掛けて、顔を膝のほうにうつむかせているマヤが真澄の
視界に飛び込んできた。
マヤの顔は流れ落ちている髪の毛に隠されており、真澄からマヤの表情を伺うことはできない。
真澄は囁くような小声で「マヤ…?」と呼びかけたが、マヤはぴくりとも動かない。
先ほど真澄は、「マヤが待っている…」と考えて焦るあまりに書類をぶちまけたりして、恐ろしく手際悪く仕事を進めてしまった。
だが、逸る心を落ち着かせて、焦らずに仕事を進めようとすると、例えば書類の紙をめくる一瞬の間に「これが終わったらマヤと…」
といらぬ妄想が浮かんできて、仕事をする手が止まってしまう。
一瞬だけ抜け出して、社長室で待つマヤに会いに行こうかと思ったが、さっさと仕事を終わらせないと、休日出勤をしてくれている
社員に申し訳なくて、抜け出すことができなかった。
結局、思っていたよりも長い時間、マヤを待たせてしまったのだ。
(怒って…いる…のか?)
真澄は恐る恐るとマヤに近づき、腰をかがめてマヤを覗き込む。
…マヤは眠っていた。
真澄はいささか驚いて、目を見張ってしまう。
マヤは居眠りというよりも熟睡しているようだ。
(こんな格好でよく寝られるな…)
真澄はやや苦笑しながらも(かわいいよなぁ…)と胸のうちで呟いていた。
連日の過密スケジュールできっとマヤはかなり疲れているのだろう。
しばらくの間起こさずに休ませてあげようと真澄は考える。
それにめったに見ることのできないマヤの寝顔を、もう少しだけ見ていたいとも真澄は思う。
真澄はマヤを横に寝かせるためにマヤの肩に手をかけようとした…が、寸前で手を止めた。
マヤの膝の上にはケーキの箱がのせてあり、マヤはその箱を手で押さえている。
とりあえずケーキの箱をのけようと、真澄は箱の上から外すためにマヤの片手をそっと掴んだ。
マヤの手に触れるだけで真澄の鼓動が速くなる。もっと握り締めていたい、撫で回してみたい、できることなら唇を寄せてみたい、
もうちょこっとできるなら舌も這わせてみたいという次から次へと湧き上がってくる衝動を無理やり振り払い続けながら、マヤの手を下ろし、
両手を箱の脇に添えてそっと持ち上げた。
(えっ…)
真澄はかろうじて出しそうになった声を飲み込む。
真澄は箱を持つ自分の手に、引っ張られるような抵抗を感じて箱を傾けそうになり、慌ててしまう。
おそるおそる箱のほうを見ると、マヤが先程、箱の上にのせてあった手の反対の手でリボンの片端を握り締めていた。
真澄の場所からは握り締めているのが見えなかったのだ。
真澄はマヤの手からリボンを抜き取ろうと傾けないようにしながら箱を軽く引っ張ったが、マヤはしっかりと指に巻きつけているため
リボンを抜き取ることができない。
(仕方ないな…マヤを起こそうか…)
真澄はしばらくの間考えていたが、ふと思いつき、傾かない程度だけ箱を持ち上げ、しゃがみこんで頭を傾け、箱の底を覗き込んだ。
真澄が思ったとおり、リボンは箱につながっておらず、箱の上にかけて結ばれている。
――リボンを解いて、箱だけ持ち抜き出せばいい。
真澄はそっと安堵の息を吐きながら、傾けていた頭を起こそうとして、ふと視線をずらした。
思わずこくりと唾を飲み込む。
真澄の視線の先にはマヤのほっそりとした柔らかそうな足がある。
マヤの膝の上に手をかけたり、頭をのせたりするのを自然にできるようになるのはいつのことか…真澄はぼんやりと些か遠い目で
マヤの足を見つめながら考えてしまう。
マヤと真澄 が付き合いだしてそこそこの月日が経ち…
二人は 手を握ったり、軽いキスをしたりするだけの付き合いしかしていない。
それでもマヤと付き合っているという事実だけにでも十分に幸せを感じている真澄は満足していた。
けれどもふとした折に真澄の中には、さらにマヤを求める理屈では説明できないような欲望が湧き上がってくることもあった。
だが、真澄が少しでも強く欲求をあらわにすると、マヤは身体を強張らせ、顔を真っ赤にし、小刻みに身体を震わせる。
そんなマヤを見るたびに、真澄は焦らずにじっくり時間をかけようと考えなおしていたのだった。
真澄は遠い目をしたまま、マヤの膝に目の焦点を合わせないようにしたまま頭を起こす。
片手で箱を上手く支えながら蝶結びをしたリボンの片端を引っ張り、するりとリボンを解く。
真澄は応接セットの机の上にケーキの箱を置いた。
「いいよなあ…おまえ…」
真澄はぼそりと呟く。
馬鹿な思いだという意識はあるものの、ついケーキに羨望の眼差しを注いでしまう。
真澄は軽く溜息をつきながら、マヤの肩に手をかけ、マヤの上半身をゆっくりとソファーに横たえた。
足もソファーの上にあげなければと思うが、意識しすぎてマヤの足に触れることができない。
(とりあえず、毛布でも持ってくるか…)
真澄は名残惜しげにマヤの二の腕を撫で擦り、重たい腰をあげて、部屋を出て行った。
真澄が出て行ってからしばらくの時が経ち…
いつのまにかマヤは足をソファーの上に上げていた。
マヤは夢を見ていた。
夢の中でマヤはケーキの箱を胸に抱きかかえて歩いている。
どんな事態に遭遇してもケーキの箱だけは落とさないように身から離さないように、リボンをしっかりと指に絡ませていた。
そして、ひょいひょいと軽い足取りで飛ぶようにしながら人ごみの中をすり抜けている。
夢の中の動きに合わせて、マヤはソファーの上で身体をひたすらコロコロパタパタと動かしていた。
しばらくの間、マヤはソファーの上でまるで踊っているかのように寝返りをうっていたが、やがて…夢の中にて、目的地に到着したので
あろう…おとなしくなり、にんまりと笑みを浮かべながら、スースーと寝息をたて始めた。
毛布を手に再び社長室に入っていった真澄は、マヤに目を向けたとたんに、固まってしまう。
(……………………)
真澄は一瞬頭の中に浮かんだ言葉にうろたえ、顔を赤らめる。
(何を考えているんだ、俺は!…おいっ速水真澄っ!)
真澄は胸のうちで自分を叱咤する。
けれども、振り払っても振り落としても、湧き上がってきた言葉は、真澄の脳裏にこびり付いて離れてくれない。
――プレゼントはあ・た・し♪
真澄が解いてそのままにしておいたリボンがマヤの手や身体にゆるやかに絡まっていた。
おそらく寝返りをしたときに巻きついてしまったのだろう。
冷静な時ならば恐らく何も思わず、ただ微笑ましく思う姿である。
けれども、先程ほんのわずかだけだが、真澄の心には火がついてしまっていたのだ。
心臓がばくばくと音をたて、真澄は息苦しくなる。
(あれがあるからだめなんだよな。それを外せばいいんだよな。これがなければ変なこと考えないよな…そうそう、そうだよな…)
真澄はごくりと唾を飲み込み、煩悩を振り払いつつ、心の中でぶつぶつと呟きながら、ギクシャクとした足取りで一歩一歩とマヤに
近付いていき、マヤが眠るソファーの前にしゃがみこんだ。
やや 震える指先でリボンをつまむ。
(どこがどうなっているんだよ…)
焦るあまりにリボンの状態を冷静に把握することができない。
「うわっ!」
適当に引っ張ったリボンはマヤの身体を離れずに、余計にきつく巻きついてしまう。
イラスト:ひいらぎ様
しかも、ほんのわずかだがマヤのセーターやスカートが捲くれあがり、ちらりとマヤの素肌が見えていた。
真澄は恐る恐るとマヤの顔を伺う。
別に悪いことをしているのではないと十分にわかってはいるのだが、この状況で目を覚まされたら真澄は何とも気まずく思うのだ。
真澄はごっくん、ごっくんと唾を飲み続け、落ち着けと自分に必死に言い聞かす。
とりあえず、手に絡まっている箇所から解いていこうとおずおずとマヤの手を取り上げた。
(かわいい…)
真澄の手にすっぽりと収まるリボンの絡まったマヤの手はなんとも言えず可愛らしい。
思わずうっとりと見つめ、自分の指先でマヤの指先を玩んでしまう。
そして…
真澄は吸い寄せられるようにマヤのきめ細かな手の甲に唇を押し当ててしまっていた。
真澄はここで止めるつもりだった。
けれども唇から伝わるすべらかなマヤの肌の感触はかろうじて保ち続けていた真澄の理性を思い切りふっ飛ばしてしまう。
真澄はもはや自分を止めることができなかった。
マヤの背中に大きく腕を回し、マヤの身体の上に自分の上半身を覆い被せていく。
そして、真澄はマヤの華奢な首筋に顔をゆっくりと埋めていった。
「ん…?」
マヤはぼんやりと目を覚ました。
馴染みのない重みを自分の身体に感じる。
徐々に焦点のあってきた目に見慣れたスーツの布地が飛び込んでくる。
「えっ!?」
マヤは大きく目を見開いた。
慌てて身体を跳ね起こそうとする。
だが柔らかく優しくだが、身体に重みをかけられて、起き上がることはできない。
「は…やみさん…」
真澄が優しいながらも熱っぽい光を湛えた目でマヤを見下ろしていた。
「え…っと…あの、えっと…」
ようやく自分の置かれている状況を理解して、マヤの顔は真っ赤になる。
マヤはうろたえるあまりに、言葉を上手く発することができない。
「マヤ」
真澄はマヤの目から目を逸らさないままにマヤに呼びかける。
「はい…え…あ…ケーキ……あれっケーキはっ!?」
マヤは真澄の腕の中から逃れようともがくが、真澄は腕の力をゆるめない。
真澄は身体を動かさないままに目線だけを動かした。
マヤは首だけ動かして真澄の視線を辿り、応接セットの机の上にケーキの箱が置かれているのを確認する。
「あの…私、こけないで、ちゃんとまっすぐに持ってきて…」
「ああ…」
「マヤ…」
真澄はこの上なく柔らかく温かく優しく、そしてほんの少しの艶を込めた声音でマヤに呼びかける。
マヤはびくんと身体を跳ね上げた。真澄を見上げた瞳に、ほんのわずかだが怯えたような色を浮かべてしまう。
真澄の目から目を逸らすことができない。
「…ありがとう」
あらゆる意味を込めて真澄は囁く。
いきなり思いもしなかった真澄の言葉にマヤは目を瞠ってしまう。
「あの……」
「とてもうれしい。ありがとう」
マヤはすうっと息を飲み、その息をゆっくりと吐き出しながら、肩の力を抜いていった。
真澄はあまりにも喜びが大きすぎてそれを内で抑えることができなかったから自分を抱きしめているんだとマヤは理解した。
「速水さんが…こんなに喜んでくれるなんて思わなかった…」
「そうか?」
「うん……よかったあ…」
マヤは安堵の笑みを顔いっぱいに浮かべる。
真澄は微笑みながら腕の力を緩めマヤの身体を引き起こした。
しばらくの間、真澄はマヤの肩を抱いてじっと動かず、マヤもおとなしく真澄に身体を預けていた。
やがて、真澄はふうっと大きく息を吸って吐き、ゆっくりと
言葉を出す。
「俺のマンションでゆっくりしようか?」
「え…うん…そうですね…」
真澄は驚いて目を見開く。まさか、あっさりとマヤが頷くとは思っていなかったのだ。
「いいのか?」
「…うん、ここだと速水さん、お酒も飲めないし……そのほうがいいかも…」
真澄は踊りたくなるような気持ちになってしまった。
本当は理性を保つことができなかったからなのだが…思い切ってマヤを抱きしめてよかったんだと真澄は思う。
プレゼントにケーキを持って来てもらうことにした自分の選択も褒め称える。
ケーキ(+リボン)はマヤの最高の笑顔を引き出すためのものであると同時に、真澄の欲望をさりげなく上手く引き出してくれるもの
・・・…と真澄は考えている。
(〜♪〜♪〜♪)
真澄の頭の中はすでに言葉では表すことができない状態になっている。
マヤは何故こんなことになっているのかと不思議そうに首を傾げながら、自分の手に絡まっているリボンを解き、
再びケーキの箱に
巻きつけた。
箱を胸に抱きしめて、にっこりと笑顔を浮かべて真澄に声をかける。
「速水さん、行きましょう!」
「………………」
元気いっぱいのマヤを見て、真澄は喜びの中に少しの不安を感じる。
何だか二人の言っていることや考えていることが微妙にズレているような気がしてきたのだ。
初めて真澄の部屋に行くのに、マヤがあまりにも落ち着いていて普段どおりなのも何だか不可思議な気持ちにさせられる。
「今日は、マヤは帰れない……………かもな」
確認をするために、あまり露骨になり過ぎないような言葉を選んで呟いてみる。
少々気恥ずかしいので、マヤから目線は逸らして
マヤの持つケーキの箱を見つめながら…
「そうかな?」
「ああ…」
「そうでもないと思うけど…」
「……え…?」
マヤはケーキの箱をじっと見つめながら答える。
「う〜ん…確かに大きいけど…でも、一晩で食べきれないほどではないですよ」
「…………」
真澄は呆然と立ち尽くしてしまう。
今日はいつものように理性を組み立て直してマヤの極上の笑顔だけで満足するべきなのか、マヤを部屋に連れ込んで理性を組み立て直す
ことができるのか…とぐるぐる考えながら、ケーキの箱を宝物のように抱えてゆっくり歩いていくマヤの背中をぼんやりと見つめていた。
そして…
真澄は背広のポケットから携帯電話を取りだし、番号ボタンを押し始める。
とりあえず 一晩で食べきれないほどの大量のケーキやごちそうを真澄の部屋に用意をさせようと思いながら…
(おわり)
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