so sweet

ふわふわ+陽炎(イラスト)








「何をしているんだ…?」



シンと静まり返った部屋の片隅で、あたしは彼の声を耳にする。



彼の足音が確実に近づくたびに、確実に心臓は加速し、うるさくなっていく。


ドキン、ドキン、ドキン…


…今、彼に心を見透かされるのは、なんだか悔しくてたまらない。




「見ての通りです…。台本、読んでるんですよっ!」


強い口調の言葉は無意識のうちに飛び出していた。



…うわぁ…可愛くない…






もとはと言えば…10分ほど前の、ほんの小さな口喧嘩が原因だった。


だから あたしは わざとらしく台本を引っ張り出してソファーに座り込んで彼に背中を向けて

いたワケで…。


いつも通り 彼の方から仲直りのキッカケ作ってくれるって、心のどこかで期待していたのも

本音なんだけれど…。



ああ…いつまでもこんな顔してないで、早く笑顔にならなくちゃあ…。


…分かっているのに、どうしてあたしはいつもこうなんだろう…。






そんな事をぼんやりと考えながら顔も上げずに台本を見つめていたあたしは、ふいに彼が

ソファーの背後に回り込む気配に気付いた。



ドキン、ドキン、ドキン…


心臓は正直に反応を示してしまう。


やだなぁ…。





「何もいま台本なんて読まなくてもいいだろう…?君のことだから、そんなものはすぐに

覚えられるじゃないか…」


再び、彼の低い声が響き渡った。



「…今、読みたい気分なんですっ」


ああもう、ホントに自分がイヤになる…。




しばらく彼は言葉を返してくれなかったけれど、やがて冷ややかにも聞こえるようなセリフが

あたしの耳に届けられた。


「勝手にしたまえ…」


(え……)





…ズキン…


胸の奥がキュッと悲鳴を上げている。



本気で怒ってしまったの…?

どうしよう…。



今すぐ謝っちゃったほうがいいのかな…。

でも、でも…どうしても言葉が出てきてくれないよ…。


「……」


まるで世界中で一人ぼっちになってしまったような寂しさに包まれていく。





けれど次の瞬間…

ふいに大きな手のぬくもりを感じたあたしは、ビクリと身を震わせていた。



彼の長い指先は あたしの髪をふわりとかきあげ、サラサラと音を立てて楽しんでいる。



「な、なにしてるん…ですか…?」


「暇だから君が台本読み終えるのを待っているんだが…」


「……」



あたしは顔を上げることなんて、とてもできない状態だった。


俯いたままの あたしの前髪には、彼の頬がぴったりと寄せられている。


ドクン…


意識がどこかに飛んでいっちゃいそう…。



あ、今、髪にキスをされたような…???



ドクン、ドクン、ドクン、ドクン…




「なんだ、ちっともページが進んでないじゃないか。俺はいつまでここで待てばいいんだ?」


「だ、だって!速水さんが集中させてくれないからっ!!」


「ほら、だったらもう、台本なんて後にすればいいだろう…」


「う……」


あたしが困惑した顔で俯いていると、彼は ぼそりと呟いた。


「お、キスシーンなんてあるのか…?」


「えっ?やだ、うそうそっ!どこにそんな…っ」




…!!!…




…あっと言う間だった。


…拒否する間もなく、まんまと唇を奪われていた…。


彼の温かくて柔らかい唇は、いつもと同じ…ほんのりとタバコの香りがする…。




ああ、騙されたっ…。



なんだかとっても恥ずかしくて、ますます彼の顔が見れなくなってしまいそう…。


困った…。

はぁぁぁぁ……。




こんなあたしの気も知らないで、どうしてそんなに余裕な態度でいるんだろう?

悔しくて、もどかしくて、自分が分からなくなる。



「…さあ、こんどはどんなシーンがお望みかな…」


耳元でちょっとイジワルそうに囁いた彼の言葉は、ますます あたしの感情を引っかき回す。




もうダメだ…。

喧嘩しているのは、もう限界…。

早く彼の胸にすっぽりと包まれてしまいたい…。




でも、でも…

すぐに素直な言葉で謝るなんて、やっぱり悔しいから…。

もう少しだけ怒ったふりをしていてもいいかな…。



もしも素直に「ゴメンね…」って言えなくても…。

「大好き…」が言えたら許してくれるかなぁ…。




あと5分…。

ううん、3分だけ…待っていて…。


そしたらきっと、いつもの笑顔で振り返るから…。




だから…速水サン…



お願いだから呆れないで…もう少しだけ ここでこうしていてね。






おわり
















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あとがき

ルウキさん&陽炎さんのサイト「G-cubic.」にて、一目惚れした陽炎さんのイラスト。

妄想が止まらず、無理やりお願いしてコラボさせていただきました!

もう、この余裕たっぷりの速水さんの雰囲気、そして純情なマヤのコンビが溜まりません。

素直に顔を向けられないマヤ、って感じがしたので、こんなオハナシに…。

サイトですでにイラストを見て知っている方は、「こ、こんなシチュじゃないのよォ…!」と

お怒りではないかと心配。すみませぬ…。

陽炎さん、快くコラボさせて下さってありがとうございましたvv


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