TECHNIQUE 〜ステキなたくらみ・アゲイン〜

〜written by 花音〜



金輪際こんな無茶な事をしないと固く心に誓ったはずなのに・・・・

桜小路の往生際の悪さにステキなたくらみの封印が切って落とされることとなった。


これは桜小路と紫織に捧げる「ステキなたくらみ」の一部始終である。





大都芸能 速水真澄の妻、北島マヤを何時まで経っても忘れられない一人の男がいた。

その名は桜小路優。

若手ホープと期待されながらも、マヤのことを忘れられず、「オレはまだマヤが好きだ!」という

看板を背負って歩いていた。

そしてそのことが真澄の逆鱗に触れ、芸能界から干される寸前のところまで追い込まれていた。


唯一ある仕事、それは紅天女の一真役のみ。

彼はこの出演料で何とか生計を立てている。

しかし彼は何故、自分が芸能界から干されかけている事を知らないでいた。



そして大都芸能 速水真澄を忘れられない一人の女がいた。

その名は鷹宮紫織。

経済界のドン「鷹通グループ」の一人娘。

政略結婚で速水真澄と婚約するものの、真実の愛に目覚めた真澄は全てを失う覚悟で婚約破棄を申し出て

人生最初の恋を無残な形で終わることとなった不幸な女である。

病弱だった彼女にしてみれば、速水真澄は初めて恋をした相手であり、忘れる事は到底出来ずにいた。


傷心の彼女は自棄を起こして銀座にあるクラブで働き始めたという風の便りが届いた。


ある日、桜小路が週刊誌のゴシップを飾る事になる。

「かつての清純派アイドル桜小路優。実はすごいテクニシャンだった!」


これだけでは何の事かさっぱり分からない。


実は桜小路が一度だけ行きずりで一夜限りの関係をもった女がいた。

その彼女が売名行為目的でこのときのことを面白おかしく週刊誌に喋ったのだ。


「このテクニック、上手く利用できないものか?」

真澄は週刊誌を読みながらあれこれ考える。

「まあいい・・・一度この女を呼んで事情聴取するとしよう・・・・」


そう・・・この女、大都芸能所属の売れない演歌歌手だった。

一発売れそうな曲を提供するとでも言えばなんでも喋るだろうという計算もある。


真澄は急いでこの演歌歌手を社長室に来るように、水城に手配させた。


よっぽど彼女は暇だったのであろうか。1時間後には社長室を訪ねてきた。

真澄は予定通り彼女に「売れる曲を提供する」という美味しい話を目の前にちらつかせて

桜小路のテクニックを洗いざらい喋らす事に成功する。


しかしここで明らかになった事実は真澄の怒りという炎にガソリンを注ぐ内容であったのだ。

話によると確かに桜小路のテクニックはすごいらしい。

しかし夜な夜なマヤのことを想像してこのテクニックを磨いたと言うのだ。


しかし、演歌歌手はそのテクニックにメロメロらしく、忘れる事が出来ないと言い切った。

「そうだ!これだ!!!」

真澄は不敵な笑みを浮かべる。我ながらいいプランが浮かんだと自身満々であった。


このプランを実行に移すべく聖をプライベートマンションに呼び出した。


マンションに行くと、すでに聖はスペアキーで鍵を開けてリビングで待っていた。

「聖・・・・。これからオレが言う事を実行に移して欲しい・・・」

真澄は思いついたプランの全容を聖に伝える。


一瞬聖は驚いた表情をしたものの「分かりました」とある場所に向かっていった。





聖は客をなりすまして、銀座にあるクラブに潜入する。

そう、紫織が働いている店だ。

聖はママに紫織を自分の席に座るように目配せをする。

ママはすぐさま「ああ・・・ちょっとさおりちゃん、1番ボックスご指名よ・・・・」と席につくように促してくれた。

「いらっしゃいませ・・・・」

紫織は若干ぎこちないものの、ホステス業に慣れてきているようであった。

それにしても、源氏名をもう少し何とかならないものか・・・・と聖は思う。

まあ、そんなことは置いておいて・・・・・早速本題を切り出した。


聖はニセの名刺を紫織に差し出す。

「芸能プロダクション パレットクラブ 代表 城下譲二」


紫織は「まあ・・・芸能プロダクションの方」と興味を示す。


「実は、和服の似合う清楚な日本美人の方を探しておりましてね

・・・・あなたを見てぜひ出演していただきたいと思って声を掛けさせて貰ったんですよ・・・・・」


紫織は大事そうに名刺を握り締めながら

「まあ・・・・そんなお話ワタクシに来るなんて思ってもおりませんでしたのよ・・・・。

そんな大それたことワタクシに出来るのかしら・・・・」


聖はこの様子を見て一気に畳み掛ける。

「ええ・・・大丈夫ですよ。ただ濡れ場が多いので、それだけご了承していただければ・・・・」

紫織ははじめて聞く言葉に小首をかしげる。

「濡れ場って一体何の・・・ことなんでしょう・・・・・」


聖はオイオイと思いながらも

「それは男と女の営みを演じるってことですよ・・・・」

と紫織の耳元でささやいた。


紫織は首筋まで真っ赤になりながらも

「ワタクシにできるかしら・・・・・」

と嫌がる様子を一向に示さない。真澄との婚約破棄が彼女を少しずつ変えていったのであろうか・・・・・。


その後も色々と聖に質問する紫織。

聖が店を後にする頃にはすっかり乗り気になっており

「撮影がとっても楽しみ」とまで言って見送る始末であった。



次の日、桜小路を近くの喫茶店に呼び出す。

聖は単刀直入に「美味しい仕事の話だか・・・・」と切り出す。

仕事に飢えている桜小路は「どんな役でもやります!!!」と切羽詰った眼差しで聖を見つめた。


「ちょっとした短編映画なんだが、少々濡れ場の多い映画でね・・・。

ただ相手役も素人さんなんだがとってもきれいな人なんだよ・・・・。君のテクニックは業界でも評判だよ・・・。

そのテクニックを試せて、お金になるんだ。こんな美味しい話はないだろう?」


桜小路の弱みに付け込むようにして、出演許可を取り付ける。


聖は早速真澄に二人から出演のOKを取り付けたことを報告する。

「よし、さすが聖だ。後の準備も首尾よく頼むよ・・・・・」


満足そうな真澄の表情を見てホッとする聖であった。



出演OKを取れてから1週間後、遂に撮影当日を迎えた。

撮影現場は、桜小路のたっての依頼でこの場所に決まる。

ブティックホテル インドネシア☆バリバリ

桜小路の好きそうな寒い名前のホテルである。

紫織は緊張した面持ちをしながらも

南国一色の部屋に満足したようでこれから始まる未知の世界に胸をときめかしている。


聖は簡単に段取りを説明する。

桜小路には思う存分やってくれていいと話してある。



そしていよいよ撮影が始まる。

桜小路は恥らう紫織の服を脱がし始める。

他の男を知らない真っ白な紫織の肌が浮かび上がる。


紫織は一言、桜小路にささやく。

「ワタクシ・・・初めてですのよ・・・優しくしてね・・・・・」


この一言で桜小路の理性のネジが弾ける。

後は己の欲望のまま事を進める桜小路。

別室でモニターを眺める聖は桜小路のあまりにも激しい行為に固まってしまう。


紫織も桜小路も「アハン☆ウフン!」と言って台本通りのシーンの撮影を終えた。

その台本にはただ一言。

「激しく欲望のまま愛しあう事」


二人とも初めて肌を合わせたこともないくらい息の合ったところを見せた。


少しだけ冷静になった桜小路は、紫織にある疑問を投げかける。

「どうしてあなたみたいなきれいな人が、一度も男の人と付き合ったことがないのか・・・・」と。


紫織は少しだけ悲しそうな眼差しで一言呟く。

「ワタクシ、おじい様の勧める相手と婚約をしたのですが、いつのまにか恋をしてましたの。

でもその方には11歳も年下の忘れられない人がいらっしゃって・・・・。振られちゃいましたのよ・・・・」


桜小路はもしや?と思う。

違っても構う事はないと思い、紫織に単刀直入に質問を投げ返る。

「あなた・・・・鷹宮・・・・紫織さんでしょ・・・・・」


紫織はビックリする。

ここに居る人で自分の素性を知る人間はいないというからこの話を受けたのに・・・・。


そして紫織も気付く。
自分の目の前に居るのが北島マヤのことを好きで好きでたまらなかった、桜小路優だという事を・・・・・。


うろたえた紫織の顔をじっと見つめながら

「速水さん・・・・あんたバカだよ・・・・こんなきれいな人を放っておいて・・・・。

オレがあんたなら絶対にこの人を捨てるようなことはしないさ・・・・・」


紫織は紫織で

「マヤさんもバカよ・・・・。女の悦びを最大限引き出してくれる桜小路さんを振って、

仕事の事にしか興味のない男に走って・・・・。ワタクシ、よかったわ・・・・。婚約破棄してもらって。

だってこんなにすばらしい人とめぐり合えたんですもの・・・・」

と桜小路に寄り添う。


桜小路は強がりでもない本心を見せた紫織を愛しく抱きしめる。


「オレがあなたを幸せにする・・・・・・」

紫織は初めて自分を女としてみてくれた桜小路にメロメロで、真澄のことはすでにどうでもよくなっていた。



モニターの前の聖は「よし!!」と小さくガッツポーズをした。






後日、この時のビデオテープを持って真澄のもとを訪れる。

「ご覧になられますか・・・・」

真澄は聖からこの件について詳しい報告を聞いていなかった為にイヤでもこのビデオを見るほかなく、

しぶしぶビデオテープをデッキにセットした。


深いため息とともに再生ボタンを押すと画面には紫織と桜小路の姿が浮かび上がる。


無修正ノーカットだけに生々しい映像で、何度も目を覆いたくなったが、噂に聞いていた以上に

桜小路のテクニックはすごかった。


最後に紫織も桜小路もキレイさっぱり、真澄やマヤのことを忘れて

新たなる道を歩む決心をしたことについてはやれやれと思う。


「聖・・・・それにしてもこのホテルの名前寒いな・・・・・」

真澄はオイオイというをする。


聖も答えをつまらせる。

「はい・・・・しかしこれは桜小路のたっての依頼で・・・断れませんでした・・・・」

「そうか・・・・相変わらず寒いヤツだ・・・・・・」


真澄はここまで言うと今迄耐えに耐えていた笑いを堪えきれずおなかを抱えて笑い始めた。

これには普段クールな聖も大笑いしている。





今回も上手くいったステキなたくらみ。

まさかこんな無茶なプランが予想以上にいい結果をもたらすとは・・・・少々驚きの部分もある。


真澄は「二度あることは三度ある・・・・」という不敵なセリフを残してビデオの停止ボタンを押した。





後日、紫織から一通の手紙が届けられた。


「速水真澄さま


ワタクシ、このたび桜小路さんと結婚する事になりました。

桜小路さんは、あなたとは違って本当に私のことを大事にしてくれます。

私はこの優しさについていこうと思います。

あなたと別れることでこんなステキな人とめぐり合う事が出来て紫織はシアワセです。

それでは・・・・ごきげんよう・・・・・

                              鷹宮紫織  」


真澄は紫織からの手紙を読んで満面の笑みを浮かべる。


今回もしてやったりの真澄であった。



おしまい





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