恋するキューピット

 

3月上旬のすがすがしい陽気の中、ちょうど仕事の空き時間ができた真澄はタクシーに乗り、都内の

デパートへと足を運んだ。

「フフ・・・何がいいかな?3倍返しは基本だけどな・・・俺はそれ以上返しても足りない位だ・・・」

ブツブツと呟きながら歩く真澄。


そう、今日はホワイトデーにマヤに贈るプレゼントを買いに来たという訳だ。


なんと、先月のバレンタインデーに、真澄はマヤから義理チョコを貰えたのだった!


わざわざ大都に出向いてくれたマヤは、真澄に叩きつけるようにチョコを渡し、

「義理ですから!!みんな同じチョコですから!変な意味じゃないですから!!」

と、やけに義理を強調しながら去って行ったのだ。


「まあ、義理でも貰えただけ嬉しいからな。・・・しかし、なぜあれほどムキになっていたのか・・・」

超鈍感な真澄はマヤの本心も気付かず、首をひねるばかりだった。

マヤは『義理』という名目で必死でチョコを渡したというのに・・・。


・・・ちなみに、マヤのくれたチョコは、かなり高級そうな10個入りのトリュフだった。


「義理にしては豪華だったなあ。他にもたくさん配ったのだろうか・・・」

マヤは真澄にだけ特別高価なチョコを渡したのだ。 しかし、それすらも気付かない真澄・・・。


『おいしかったよ・・・マヤ・・・・』

真澄は他から貰ったチョコには手もつけなかったが、マヤからのトリュフだけはしっかり食べたのだ。

一度で食べてしまうのはもったいないので、1日1個ずつと決め、冷蔵庫から毎日取り出して楽しむ日々で

あったが、とうとう10日目に食べつくしてしまった時は、心の中に冷たい風が吹き荒れ、泣きたくなった。

・・・当然、空き箱もリボンも大切なコレクションとして社長室の引き出しに保存してある。

時々、仕事の合間に取り出しては、マヤのぬくもりを感じているのだ・・・。

いや、仕事よりもそうしている時間の方が多いかもしれない・・・。


そして紫織からは、『真澄&紫織のソックリ似顔絵チョコケーキ』などという、最悪な特注品が渡されたのだが

一目見て吐き気がしたので室温で放置し、気付いたらカビが生えていた。

2人の絵は寄り添うように描かれていたが、真澄は真っ二つに引き裂いてゴミ箱へ捨ててしまった。


「あの人のお返しは、適当に誰かに買わせて贈ればいいし、マヤへは俺が選ばないとな♪」


真澄はニヤニヤしながら店内を物色して歩いていく。

そして、1階の化粧品コーナーを横切ると、華やかな香りに誘われ、目を移した。

「香水・・・いいかもな・・・。 でも、香水を贈るなんて、ちょっと誤解されそうだなあ。」

真澄は、最近読んだ、「ESCAPE」という小説の内容を思い出した。

それは、愛しい人に香水を贈り、想いが通じ合って結ばれ、2人の香水の香りが肌で混ざり合う・・・という

刺激的なストーリーだった。

「ああ・・・あの小説よかったよなあ・・・。あれが俺とマヤだったら・・・」

気弱な真澄には、脳内で主人公を自分とマヤにすり替えることぐらいが精一杯だった。


「うわ・・・紫織さんがつけている香水の匂いもするぞ・・・うっ・・・」

・・・気分の悪くなった真澄は、ようやくその場を離れた。


ふと見ると、『彼女にセクシーなランジェリーを贈りませんか?』などというコーナーがあり、思わず

喉を鳴らす真澄。

「うっ・・・これは変態扱いされそうだからダメだな。 いや・・・しかし、こんなモノを贈りあえるような関係が

うらやましい・・・」

ふと、マヤの悩ましい下着姿を思い浮かべ、鼻の下を伸ばしながら、慌ててブンブンと首を振る・・・。


真澄は悶々としながら、ジュエリーショップへと足を運んだ。

「うーん・・・宝石を贈るのも重く感じるだろうか・・・。あの子に似合いそうな物は山ほどあるが・・・」

いくつか手にしてみたものの、そんな考えが浮かんでは消えていく。


好きな相手に贈るプレゼントは、やはり悩んでしまうものだ。 


いっそ、紫の花束を渡し、

「俺が紫のバラを贈っていたんだ。」

と言えればどれだけ楽になるだろうか・・・。


そんな風に少し虚しい発想をしながらぼんやりとしている時だった。


・・・何気に見覚えのある人物に気がつき、真澄はゴシゴシと目を擦る。

・・・それは、ウキウキしながら歩いている桜小路の姿であった・・・。

「速水社長!!」

『う・・・・俺の『会いたくない人物BEST10』に入るヤツにバッタリ会うとは・・・・』

ちなみに、BEST10に入るのは「紫織・桜小路・里美茂」などのメンバーが主流である。


真澄は顔に出さないよう、なるべくクールに応えた。

「やあ・・・奇遇だな。」

「こんにちは! 社長、どうしたんですか?買い物ですか?」

桜小路がくったくのない笑顔で話しかけてきた。

「ああ、まあな。」

「そうですか・・・ボクも買い物なんですよ! もうすぐホワイトデーだから・・・」

桜小路は頭をポリポリとかきながらそう言った。


「・・・・義理チョコのお返しなら、下の階に特設コーナーがあったようだが。」

真澄は案外サラリと失礼な発言をしていた。

まるで『君は義理チョコしかもらってないんだろう?』という意味にも取れる。 


「ええ、義理チョコのお返しは、もう買ったんですよ。でも・・・マヤちゃんへのお返しがまだなんで・・・」

桜小路が恥ずかしそうにそう言うのを聞き、真澄はフリーズした。


『な・・・なに?ま、まさか桜小路・・・マヤから本命のチョコをもらったのでは!?!?!?』

思わずゴクリと息を呑むと、桜小路は言葉を続けた。

「あ、でも、それも義理みたいなんですけど・・・。みんなと同じチョコだったし・・・」

それを聞き、真澄は胸を撫で下ろす。

『義理チョコか・・・・こいつも俺と同じ物をもらいやがったのか・・・』

「それにチョコも5個しか入ってないし、値段も500円くらいのヤツなんですけど・・・」

「・・・!!」

桜小路がそう言ったのを聞き、真澄は思わず耳を疑った。

『・・・500円?5個?・・・俺のと違う!!みんな同じチョコじゃなかったのか・・・なぜだ?』

真澄は自分が貰ったチョコを思い出す。・・・あれは、500円で買えるようなチョコではなかったはずだ。


「おい・・・他にもマヤからチョコ貰ったヤツはいるのか?みんな・・・同じだったのか?」

「え・・・は、はい。ボクだけ違うと嬉しかったんですけど・・・。その場で貰った奴らもみんな同じでした。」

桜小路は少し悲しげな表情で呟いていた。


『・・・どういう事だ?』

真澄の心が大きくざわめき、何かを期待するような気持ちが溢れ始める。

『俺だけ・・・特別なのか・・・?』



しかし、持ち前の鈍感ぶりを発揮してしまう真澄・・・。

『・・・そうか、大都芸能の社長だから、気を遣ったんだな。』

・・・自分でそう納得しながら、虚しくなりつつあった。

『フフン・・・まあいい・・・同じ義理でも、俺のほうが豪華じゃないか!チョコの数も倍だし。どう考えても

桜小路よりも高級品だ!フッフッフ・・・大都芸能の社長でよかった・・・』

ちょっとだけ優越感に浸る真澄。



・・・桜小路はフンフン♪と鼻歌を歌いながらショーケースのネックレスを覗き込んだ。

「あ、これとかいいなあ・・・」

桜小路が見ているのは、1万円以上の商品だった。


「・・・・。」

真澄は思った。

『こいつ・・・義理チョコのお返しにこんな高価な物を買おうとするなんて、浮かれすぎじゃないのか!?』

・・・自分もそうなのだが。

『よく考えてみろ!このトンチキ野郎!お前は計算もできないのか?3倍返しにしても、計算は簡単だ。

500×3はいくつだ?1500だ!! さあ、さっさと下の階にでも行って適当なクッキー缶でも買って

帰れ!!計算もできんヤツは寺子屋にでも修行に行ってこい!!』


真澄が睨むように桜小路の行動を目で追っているにも関わらず、彼はブツブツと言葉を呟いていた。

「うーん・・・ペンダントは誕生日にあげたしなあ・・・」

『なに!?!?!?!」

真澄は、桜小路の背後でその言葉を聞き、固まった。

「・・・誕生日にプレゼントまで渡したのか・・・・?」

なるべく冷静に言葉をかけた真澄。


「ええ・・・そうなんです。 それが、なかなかシャレたペンダントなんですよ〜!銀色のハートの形で、

ロケットペンダントなんです!知ってますか?社長! パカッて開いて、好きな人の写真とか入れられる

ペンダントなんです!イカしてると思いませんか?」

「・・・・・。」

桜小路はキラキラした表情で熱く語っていたが、真澄は顔を強張らせ、白目で彼を見つめていた。

『ロケットペンダント・・・!!そんな物、まだ売っているとは!!しかも、プレゼントするとは!!桜小路、

お前のセンスの悪さは世界一だ・・・。イカしているどころかイカれているぞ・・・』


桜小路は嬉しそうに言葉を続けた。


「それで、ついでにボク、今度やる芝居のチケットとチラシも渡したんですけど、そのチラシのボクの写真、

ペンダントにピッタリサイズなんです! マヤちゃん、気付いたかな・・・フフフ・・・」


「・・・・。」

『な・・・なんてナルシストなんだ!俺以上だ!! 危ない・・・危なすぎる!!』


「はは・・・彼女はペンダント、どうしたんだ・・・・?」

平静を装い、問いかける真澄。


「それが、あれからしばらく会ってないんで・・・。」

「そうか・・・君のセンスは最高だ・・・特に名前入りのシャツとかもな・・・。」

真澄は心にもないことを言っていた。そして、この際ヘンテコリンなプレゼントをガンガンさせて、マヤにとことん

嫌われればいい、などと冷たく考えていた。

「え?速水社長にそう言われると、嬉しいです! よし!ホワイトデーもバッチリ決めるぞ〜!ありがとう

ございます!! やっぱりプレゼントは服もいいなあ・・・! じゃあ、失礼します!!」

桜小路は、大きな勘違いをしたまま、爽やかに姿を消した。


『桜小路・・・近いうちに、アフリカの奥地に一人芝居の旅にでも行かせてやる。しかも永住だ・・・』

真澄は半ば本気でそう考えながら、デパートを後にすることにした。


結局、桜小路のせいもあり、プレゼントは決められないままだった・・・。


真澄は帰りのタクシーで、会議までまだ少し時間がある事に気づいた。

少し先には、マヤが稽古しているビルがある・・・。

「すまないが、そこで降ろしてくれ!」

ふいに思い立つと、運転手にそう叫んでいた。


「今日は確か、新しい舞台の稽古始めだったな・・・。俺が様子を見に行っても不自然じゃないぞ。」

真澄はブツブツと理由をこじつけ、練習場所として使っているビルへと入り込む。


・・・ちょうど休憩時間だったのだろうか・・・ロビーに、マヤの後姿が見えた。 自動販売機でジュースを

買おうとしているところらしい・・・。

ニヤニヤしそうになる顔をクールに抑え、マヤに近づく。


「チビちゃん・・・俺がおごってやろうか?」

後ろから思い切って声をかけると、マヤは振り返り、もともと大きなその目を更に大きくし、言葉を詰まらせて

から声を出した。

「は・・・は・・・速水さんっっ!!な・・・なにしてるんですかっ!!」

マヤはかなり動揺しながら、サッと何かを後ろに隠した。

「何って・・・仕事だよ。君が真面目に練習しているかどうかチェックに来たんだ・・・」

いつもなら突っかかってくるはずのマヤは目を泳がせ、後ろ手に持っている何かを必死で守っているように

見えた。


「・・・何を隠しているんだ?」

「・・・なんでもないです・・・」

目を合わせようとしないマヤ。


「・・・社長命令だ・・・見せなさい・・・」

真澄がマヤの腕を思い切り引き寄せると、マヤの手から銀色の鎖のようなものが光り、カシャンと音を

たてて落下した。


「!!!!!」

・・・それは、銀色のハートのロケットペンダントだった・・・。


「あっ・・・ダメですっ!」

マヤが急いで拾おうとする直前に、真澄は長い腕を伸ばし、ひらりと床から拾い上げる。

「や・・・やめて下さい!!見たらダメです!!お願いします!!」

マヤが真澄の胸の辺りでぴょんぴょんと跳ねながら奪い返そうとしていたものの、真澄が高く持ち上げた

ペンダントには全く手が届かない。


『まさか・・・桜小路の写真が入っているんじゃないだろうな・・・・!!!』

真澄は不安と怒りが混ざったような複雑な心境であったが、ペンダントは落下したショックで開きかけている。

「見ちゃダメです!!!!」

青ざめた顔で訴え続けるマヤ。



真澄は気になって仕方がなかった。

しかし、もしも桜小路の写真などが入っていたら・・・・?

真澄の心の中でさまざまな葛藤が起こっていた。

しかし・・・こんなチャンスは滅多にないであろう。この際、思い切って現実に目を向けるべきなのかもしれない。

『桜小路の写真が入っていたら・・・・・確実にアフリカ公演は決定だ!!!!!!!』

真澄はヤケクソになりながら、ペンダントの扉部分を指で摘んで開いた。



「きゃあああ!!」

マヤは、真っ赤な顔を覆い隠し、その場で座り込んでしまった。

「なっ・・・・!!!」

真澄は自分の目を疑った・・・。

ハート型に切り取られた写真は・・・・他の誰でもない、真澄の写真だったのだ・・・。


「ど・・・どういうことだ・・・これは・・・」


どうもこうも、マヤが真澄を好きだからに決まっている。

それでも気の回らない鈍感な真澄は、マヤを問い詰めようと腕を掴んだままだった。


「そ・・・それは・・・あの・・・あたしのじゃなくて・・・ひ・・・拾ったんです・・・」

見え透いた嘘を言っている事くらい、真澄には分かった。


「これは桜小路が君にあげたペンダントじゃないのか?どうして俺の写真が入っているんだ?」

そこまで言った真澄は、ようやく事情を飲み込み始めていた・・・。

マヤが自分だけにくれた、特別なチョコ。そして、ロケットペンダントの写真・・・。

『まさか・・・まさか・・・・マヤは俺のことを・・・・?』


マヤは無言のまま顔をあげようとはせず、とうとう大粒の涙をこぼし、小さな声で叫んでいた。

「ごめんなさい・・・忘れてください・・・見なかったことにしてください・・・」

「君は・・・俺を嫌っていたはずじゃないのか?違うのか?」


マヤは、もうどうなってもいい・・・と思い始めていた。見られてしまった以上、白状するしかないのだ。

「それ・・・好きな人の写真を入れておくと想いが通じるペンダントだって・・・桜小路君がくれたんです。

だからあたし・・・。 でも・・・でも本当に、忘れてください・・・。お願いします・・・」

『なんということだ・・・これは・・・夢か??』


真澄は、掴んだままの手でマヤをゆっくりと引き上げると、彼女をやさしく抱きしめた。

そして、ちょうどロビーの横に使われていない控え室があったので、そこに彼女を誘導する。


「速水さん・・・離して下さい・・・本当にもう・・・あたし・・・妙な事はしませんから・・・」

マヤは泣きながら言葉を繋げていた。


「チビちゃん・・・俺は・・・君を愛している。・・・本当だ・・・女優としてじゃなく、一人の人間として・・・だ。」

今まで口が裂けても言えなかったセリフも、相手に告白されればスラリと言えるのが不思議である。


「嘘・・・また、あたしをからかって楽しんでいるんでしょう・・・?」

「嘘じゃない!・・・君から貰ったチョコもどれだけ嬉しかったことか・・・」

何しろ、空き箱まで保存してある位なのだから。


「でも・・・紫織さんが・・・」

「彼女は、仕事上の付き合いで結婚を決めただけだ・・・。君と心が通じ合った以上、婚約は解消する。」


・・・かなり勝手な、都合の良い展開になりつつあった。

「夢みたい・・・!速水さんがあたしの事を・・・? 信じていいんですか・・・?」

「ああ・・・もう離さないぞ・・・チビちゃん!」

2人は固く抱き合い、長年の片想いに終止符を打った。


『桜小路君がくれたペンダント・・・本当に想いが通じる魔法のペンダントだったのかも!!』

『桜小路・・・やっぱりあいつのセンスの悪さは最高だ!!』

・・・2人は恋のキューピットである桜小路に心から感謝していた・・・。

ホワイトデー当日がやってきた。


2人は先日から密かに交際を始めていた。

「速水さん!!・・・どうしよう・・・」

マヤは待ち合わせ場所に現われると、スルリと車に乗り込み、謎めいた表情で真澄にそう言った。

「どうしたんだ?そんなに慌てて・・・・」

真澄が怪訝そうにそう問いかけると、マヤはおずおずと包みを差し出した。


「これ・・・桜小路君から渡されて・・・。義理チョコのお返しだって言うの・・・」

真澄はムッとしながら紙袋を覗き、中からプレゼントらしきものを取り出した。

・・・それは、白地のTシャツで、赤い大きな文字がチラリと確認できた。

ガサガサと広げてみる真澄。


「うっ・・・・何だコレ・・・?」

背中の部分は、ハートを半分に切った模様になっており、胸の部分には大きく「VE」とプリントされている。


真澄はすぐにピンときた。

これは、ペアで着るTシャツに違いない・・・。おそらく桜小路のTシャツには「LO」とプリントされていて、2人が

並ぶと「LOVE」になるのだ。そしてハートも2人が寄り添うと形になるのでは・・・?

真澄は、マヤと桜小路が2人で並んでTシャツを着ている姿を想像し、沸騰するほど腹が立った。

『あの勘違い男め!!くだらんTシャツ贈りやがって!!!』


ところが事情の飲み込めないマヤは、真澄に涼しい顔で質問していた。

「ねえ・・・変なTシャツでしょう?あたし、気持ち悪くて。「VE」って・・・何かしら?? 「べ」なんて・・・。

あたし、『妖怪人間ベム』しか思い出せないわ・・・。背中の柄も何か分からないし。」


「そうだな・・・きっと『妖怪人間ベム』のシャツなんだ。気味が悪いから、俺が預かっておこう・・・」

真澄は紙袋にTシャツを丸めて押し込むと、後部座席に投げつけた。

速攻で生ゴミと一緒に捨てられることは間違いないだろう。


「それよりチビちゃん・・・今日はホワイトデーだな。まずは食事に行こう。プレゼントも後で渡すよ・・・」

真澄は、マヤに似合いそうな高価なネックレスを購入してあるのだ・・・。

当然2人を結びつけるキッカケとなってくれた例のロケットペンダントは、処分済みだった。


「嬉しい!・・・速水さん!!」

2人を乗せた車は、ラブラブモードで夜の都会へと消えていった。






・・・その頃、桜小路はマヤに想いを寄せながらニヤニヤと思考しているところだった。

「フフフ・・・マヤちゃん・・・喜んでくれたかな?」

真澄の想像通り、彼はペアのTシャツを作成し、片方をマヤに渡したのだった。

「ボクのセンスの良さにマヤちゃんもゾッコンさ!今度の休みにはペアでどこかに行けるといいな♪アハン☆」


まさか、自分があの2人の恋のキューピットになっていた事も知らず、幸せな時間を過ごす桜小路。


彼が地獄に落とされるような事実を知るのは、数ヶ月後のこと・・・・。



彼のTシャツは「LO」のままであり、永遠に「LOVE」になることはなかった。

孤独な桜小路は、一人で「LO」のTシャツを着る日々となり、それはまるでLONELYの「LO」のように見えた。




 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送