年下 2 〜written by ひいらぎ〜
「ただいま。」
見たと語っていた。やはり、俺が普段と違うと感じたのは気のせいじゃなかったのか?!) にわかに動揺する気持ちを抑える為、気付かれないように深呼吸すると、普段通りに話した・・・・つもり だった。
そう言った声までもが、もはや自分の普段の声とは違って聞こえた。 脈が上がってきた。とにかく、一人になりたい。
まず、シャワーでも浴びて、それからゆっくり考えようと、シャワールームへ足を向けながら、服のボタン に手をかける、そしてベルト・・・
今だって贅肉が付いている訳じゃないが−少し体型が変わっているのか・・・いや、そう言えば夕食を取っ てなかったな、きっとそのせいだろ、はははっ、焦ったぞ・・・本当にそうか?)
とにかく、早々にシャワーを浴びて出てくると、あのキャンディーの入った小瓶を取り出し見つめながら、 ソファーにドサッと深く沈み込むように座った。
どうなるんだ?) もはや、思考はその一点に集中していた・・・。
結論は、簡単だった。
こんな小さな青いキャンディー一つで、現代の科学ではそんなことは不可能だ!! なのに、どうして、こんな結論に行き当たってしまうのだろう?
ああっ!!もう、気が変になりそうだ。この状況から脱するにはもう一度試すしかない。
しまっても、赤いキャンディーを同量食べれば元に戻るんじゃないのか?あれ? どっかで聞いたような話 だぞ・・・・・・まるで『手○治虫のメ○モちゃん』じゃないか!!)
がばっと起きあがろうにもソファーに体が沈んでしまって簡単に起きあがれない。足で反動をつけてよっと 立ち上がる。 天井が、いつもより高い!! 慌てて姿見の方へ走ろうとすると、膝下まできていたバスローブの裾が足にからみついてバランスを 失った。咄嗟に猫のように体を丸めてくるっと転がり、体を強打するのは避けられたが、自分の軽い身 のこなしに驚く。 ふらふらと立ち上がると、長いバスローブの下で下着がずりおちた。
そして、やっとの思いで鏡の前に立つと、そこにはどう見ても小〜中学生頃の自分がこちらを見て立って いた。
次に、聖にメールを打った。
ぐらいのものを全て二人分買って家まで来てくれ。部屋へ来るときは使用人達を近づけないように。』
『喉が酷く痛み、声が出ないので、欠勤する。会社には連絡済み。寝直すから起こすな。後で聖が 来るのでそのときはすぐに部屋へ通すように。食事の心配不要。部屋の周りでうるさくするな。』
扉へその紙を貼り付けた。
いや、正確にはもう少し早かったが、下で ばあやにでも捕まったようだ。なかなか上へ上がってこない。 誰かが、聖について部屋まで来るのではないかと心配になってくる。
聖はすぐ、それに気付き答えた。
に扉に鍵をかけた。
はずし、少し考える風な仕草をしながらポーカーフェイスを取り戻し 「真澄様、どちらですか?」 と、本来の俺の姿を探しはじめた。
俺は何も言わず聖の腕を掴むと、訝しげな眼差しを向ける聖の手を取ると奥の寝室へと引っ張っていった。
そう言った声が、まるっきり声変わり前の子どもの声で、そんな自分の声に改めて面食らい、思わず口へ 手をやったが、目の前にいる聖はただただ状況が飲み込めず固まったままだ。 当たり前か。 この、身の丈に全然合ってないバスローブをまとっただけの姿もかなり異様に見えるだろう。
と?」 聖が冷静に話そうとしつつ、警戒し、かつ動揺しているのが判る。
手短に要点をかいつまんで説明した。
聖はまだ疑っている・・・当然だ。
俺はそう言いながら、例の小瓶をバスローブのポケットから取り出すと、青い方のキャンディーを二粒取り 出し、聖に差し出した。
手のひらの上のキャンディーをしばらく見つめていたが、飲まぬ事には話が進まないと結論づけたのだろう、 俺の手から二粒のキャンディーを受け取ると口に入れ、続けて渡したグラスの水で一息に飲み込んだ。
しばらくして、聖は立ち上がろうとしたが、早速大きくなった服(正確には聖が小さくなったのだが)に動作 を阻まれた上に驚きも手伝って、ふらっとよろめいた。
そう言いながら、俺は聖を支え、そばのソファーへ座らせた。
俺は、頬を軽くペシペシッと叩きながら何度か呼びかけた。
ていた。聖に見えたのは、長いカッターシャツとジャケットの袖にすっぽり覆われた、指先さえ見えていない 哀れな手だった。 袖をたぐって袖口から手を出すと、明らかに小さな子どもの手が出てきた。 聖はしばらくその手を見つめていたが、やがて大きくため息をつくと、 「夢・・じゃ・・ないんですね。では、あなたは・・・仰るとおり、真澄様なのですね?」 と、力無い声で言い、俺は黙ってうなずいた。 |
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