RAIN 3




真澄は、マヤが開け放った引き戸の辺りからそっと薄暗い部屋を覗き込んだ。


「・・・何をしているんだ?」

部屋の中にいるはずの彼女に静かに声をかける。


まだこの部屋に足を踏み入れた事はなかった為、電気のついていない室内は何が置いてあるのかもよく

分からなかった。 開け放たれた引き戸の幅も狭いため、リビングの光も届ききっていないのだ。



真澄が怪訝そうに目を細めていると、やがてマヤの声が大きく響き渡った。

「・・あ・・・・やっぱり!もうすぐ止みそうですよ!」


真澄は薄暗い部屋の奥から聞こえる、そのマヤの声に耳を傾ける。


「・・・・・?」


「雨の音!聞こえないと思ったら、もう小降りみたいです!」


「・・・・・・」

(・・・・雨・・・・・か・・・)


真澄はようやく彼女の行動に納得していた。


おそらく、明るい部屋からでは外が見えにくいと思い、わざわざ電気の付いていない隣の部屋まで確かめに

きていたのであろう、と。


そういえば、彼女の口から度々、寝室の窓から空を見上げる、という話を聞いたことがあった。

彼女にとっての天体観測は、寝室の窓と決まっているのかもしれない。



突拍子もない彼女の行動に、彼は大きな溜息を漏らす。

からかわれて膨れっ面をしていたかと思えば、急に雨の具合が気になり、無言で隣の部屋に向かうなど、

とても真澄には考えつかない、気まぐれな行動。


(・・・本当に訳のわからない子だ・・・)

そう呆れながらも真澄は、そのような予測不可能な行動を起こすマヤを相手にしているのがこの上なく楽しいと

思っている自分に気付く。


彼は自分に対しても呆れながら、薄暗い部屋の奥にいる愛しい彼女の姿を探すことにした。



ようやく目が慣れ始め、ぼんやりと視界が明るくなったように思ったからだ。





入り口付近で壁に肘をついて体を傾けるような体勢をしていた真澄は、真正面から少し外れた場所にある

彼女のベット辺りに視線を動かしていく。 


するとガラス窓からぼやけた明りが滲み、マヤの姿を黒く映し出してるのが見えた。


(・・・マヤ・・・)


真澄は、薄っすらと浮かび上がったそのベットの上にいるマヤの姿を確認すると、大きく目を見張った。



・・・彼女は真澄に背を向ける形になり、ベッドサイドにあるガラス窓に額を押し付け、外を眺めていたのだ。

それは事情としては、よく分かる・・・。


・・・が・・・その格好はどうだろう。

彼女はベットの上で、ひざを折った状態にし、まるで小さな子供が電車内で座席に乗り上げ、外を覗き込むかの

ようにしているではないか。


スカート丈は、決して長くはない。それなのに彼女は、惜しげもなく足を10センチほど開いたまま大きく前かがみ

になり、先ほどまで隠していた太ももを はっきりと闇の中で晒している。


「・・・・・・!!!」


真澄がその姿に呆気に取られていたにも関らず、マヤは更に額をガラスに貼り付けようとして大きく腰を突き

出していく。


「このまま止むのかなぁ・・・」

彼女の小さな呟きが湿り気のある空気を震わせた。


出窓になっているせいか、ガラス窓に顔を近づけるほどに、彼女の体は より一層大きく前のめりの体勢になる。

スカートの裾の位置はその動きに比例して捲くれ上がる。

そしてそれは・・・下着が見えそうなほどギリギリのラインでストップがかかった。



なんという淫らな姿であろうか・・・。

男にとって、このような微妙な見せつけほど興奮するものはない。


彼女が何かに夢中になると他事に関しては全く意識が回らなくなる、という性格を分かりきっていたはずでは

あったが、真澄は改めてその無防備さを実感する。 

こんな出来事が自分以外の他の男と関るたびにあり得ることだとしたら・・・・。


彼は、ちっぽけな嫉妬をも巻き添えにしつつ、まるで何かに引き寄せられるかのようにフラフラと彼女の背後

まで近づいていた。



「雨が止みそうだから、そろそろ帰れって言いたいのか?」

真澄の低い声がガラスを震わせるように響いた。


「・・・え・・・え?・・・・そ、そんな・・・・あたしは・・・ただ・・・・」

ハッとしたようにマヤの肩が振動し、黒髪が揺れる。


真澄は、自分でもそんなセリフがどこから出てきたのかよく分からないと思っていた。

ちょっと彼女を困らせてみよう、という先ほどと同じような、そんないたずらな気持ちからだったのか。

それとも・・・・自分の中の何かが壊され、化けの皮が剥がれた瞬間だったのか・・・・。

とにかく、すでに手遅れと言えるほど、真澄の理性は この時点で吹き飛んでいたのだ。


一方、マヤは背後から冷ややかな言葉を投げかけられたせいか、ようやく慌ててスカートの裾などを気にする

ように両手で腰を隠し、パッと足を閉じてヘナヘナと座り込んでしまった。

背を向けた格好ではあるが、おそらく、顔も真っ赤にしているのではないかと想像がつく。


このように中途半端に見せ付けたり、恥らったりするような仕草が、いかに男を刺激しているかということを、

彼女は気付いていないのだろうか。


真澄は全身の血液がドクリと男の部分を刺激するのを感じた。

ここまでされて、何事もなく帰れる男などいるものか!


もちろん、マヤがそんなことを計算して行動したのではないことも分かっている。


しかし、こんな夜遅くに尋ねてくる恋人を歓迎し、寝室に迎え入れるという事は、何があってもいいと覚悟の

一つくらいをしておくべきなのだ・・・。

まるで自分を正当化させようとするかのように、真澄の中のもう一人の自分が大きく背中を押した。



怒りにも似た感情が溢れ始め、真澄は力強い足取りで彼女が座り込んでいるベットを前にしていた。

たった今まで目にしていた彼女の艶やかな太もも、そして両足の隙間を脳裏に焼きつけたまま・・・。


「あ・・の・・・・」

マヤが軽く振り向いたと同時に、ギシリ・・・と真澄の重みでベットが鈍い音を出した。


「あ、あの・・・なんか・・・暗い・・・ですね・・・あたし電気つけます・・・・」

そう言って目の前で立ち上がろうとしたマヤを、真澄は腕を強く掴んで引き止めた。


「あ・・・・・・」

「明るい方がいいなんて、ずいぶん大胆なセリフだな・・・」

腕を掴んでいないほうの手で、ネクタイを緩めていく真澄。


「え?あ・・・・・あたしっ!そんなつもりで言ったんじゃないですっ」

オロオロとしながら言葉を出すマヤに対し、真澄は冷ややかな声で告げた。


「”そんなつもり”って、どんなつもりだ?・・・君は何も知らないような顔をしているが、分かっているんじゃ

ないのか?」


「ど・・・どうして・・・そんなイジワルばっかり言うんですかっ・・・?」

マヤは大きな瞳をさらに大きくさせ、言葉を返してきた。


「イジワル・・・か・・・イジワルしているのは君のほうだろう・・・・」

掴んでいるマヤの手首がビクンと反応する。


「・・・またそうやって・・・・からかってばっかり・・・」

「・・・・・」


どうやらマヤは、またからかわれているとでも思っているらしい。


真澄は、言葉で伝えようとする事に苛立ちを感じ、背後から強く覆いかぶさるようにして強くマヤを抱きすくめる。


「・・・俺が冗談を言っているのか、それとも本気なのか、体で教えるしかないようだな・・・」


「!!!!!」


その、押し殺したような彼の言葉には、マヤは言葉を返せずに黙り込んだ。








ガチガチに体を硬くしているマヤの様子は、手に取るように伝わってきていた。


覚悟を決めたのか、それとも恐怖心で体が動かないのか。

真澄は強く体を押し付けると、背後から顔を覗きこむようにして、彼女の耳元へと唇を近づける。


「俺がどうしたいのか・・・分かっているんだろう・・・?」


その問いかけに、マヤは小さく体を奮わせた。 そして、何か言葉を発しようとしたのか、うっすらと唇を開き

かけてはいたものの、その言葉を待つことなく、真澄は彼女の耳たぶにをキュッと吸い上げた。


「きゃっっ・・・んんっ・・・」

突然のその感覚に、マヤは体を軽くよじり、かすれたような声を出した。

真澄はすぐに、今度は耳たぶを甘噛みする。


「・・・・あんっっっ」


くすぐったかったのであろうか。

ある意味、感じたのかもしれない。

マヤは、硬く閉じて正座していた足を一瞬で崩し、背中を丸めながら真澄に体を預けるようにしてもたれかか

った。


・・・完全に、真澄の心は彼女に溺れ始めていく。 

発したばかりの彼女のとろけるような喘ぎ声は、真澄の冷静さを縛り付けるほどに魅惑的なものであった。


もっともっと、体中の隅々まで知りたい。

すべての部分を自分の手で、指でなぶり、こんな声を出させてみたい。


すっぽりと自分の胸の中で体を預けている彼女に対しても、彼の意識の中に罪悪感は見当たらない。

もはや前回のように未遂で止めることが出来るわけがなかった。




マヤが諦めて身を任せているように見えたので、真澄は真上から見下ろすようにして、そっとブラウスのボタン

に手をかける。 それだけでも大きな張りのある膨らみを指先で感じ、真澄は昂る気持ちを抑えられなくなり

そうで息を荒くする。


ところが、すぐにマヤが小さな両手を彼の手の甲の上に被せるように乗せ、その行動を遮(さえぎ)ろうとした事

に気付く。


「だ・・・ダメ・・・です・・・」

消えそうなほど弱々しいマヤの声が闇に響いた。 

一回り以上もサイズが違うと思えるほどの小さな手が触れ、真澄は一瞬、我を取り戻しそうになりつつも低い

トーンの声で言葉を返す。


「何がだめだって言うんだ・・?」


「だ、だって・・・・・・・」

マヤはそこまで言うと無言になってしまった。



当然、真澄には分かっている。

きっと、”恥ずかしい”とか、”怖い”とか、もしくは”自信がない”などという感情がマヤにはあるのだろうと。

そんな彼女の思いは今まで腐るほど尊重し、待ち続けてきたのだから。


「俺をその気にさせたのは誰だと思っているんだ・・・?」

真澄はグイッとマヤが重ねている手をそっとほどくと、ボタンを外しにかかっていた。


「あ・・・・・でも・・・・」

マヤがブツブツと声を出している間にも、ボタンは素早く真澄の手で解放されてしまう。 

その余りの器用さにマヤは抵抗する隙がなかったのか、あっという間にシャツは大きく全開にされ、真澄は

一気にそれを肩からおとし、袖を抜く。


「きゃっ・・・・」

小さく叫び声が響くと、暗闇の中で、下着姿の彼女が青白く浮かび上がっていた。


恥ずかしそうにサッと腕を交差させ、怯えたようにして体を硬くするマヤ。 

真澄は上からその美しく膨らんだ胸元をはっきりと確認し、それから悩ましいほどに すべすべと光る小さな

肩を目にする。


(きれいだ・・・・)


真澄は磁石のように吸い付けられ、その肩に唇を寄せた。


「あっ・・・・」

マヤは、そんな部分に温かい唇が触れるという感覚を始めて知ったのであろうか、ゾクゾクと体を奮わせるような

素振りをし、小さな声をあげた。


真澄は彼女が交差させている腕を軽々と解き、大きな手のひらで下着をたくし上げ、その柔らかくて張りのある

膨らみを揉み込んでいく。


「んっんんっ・・・」

首から肩にかけて激しいキスの嵐を受け、さらに力強い腕で抱え込まれながら胸を揉まれ、マヤは小さな声を

こぼし続けた。

真澄の唇が触れた場所に、次々と紅い花びらが浮かび上がっていく。



やがて下着の片紐がマヤのなだらかな肩を滑るようにして落ちていた。 

更にたくし上げられた下着のフロント部分は乳房を隠すこともなく、もはやそれは下着としての機能を果たさない

ものへと変えられてしまっている。


乱れた彼女の姿に、真澄は全身を貫くほどの興奮が沸き起こっていることを感じる。

彼は、まるで何かに動かされているかのように、やや乱暴な手つきで下着のホックを外す。


はらり、と下着は剥がし落とされた。




一瞬で上半身を裸にされてしまったマヤは、震えながらギュッと瞳を伏せた。






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